夢枕獏「鬼譚」

浮世絵にはたくさんの鬼が出てくる。畏怖するもの、異形のものである鬼は絵師のインスピレーションをかき立てるようだ。最後に鬼は英雄達に退治されてしまうんですがね。
有名な鬼と言えば源頼光と四天王に退治される鬼あたりでしょうか?歌川国芳月岡芳年河鍋暁斎たちも妖怪画とともに鬼の絵をたくさん残しています。

私の鬼の絵一枚で選ぶとすると月岡芳年『奥州安達ケ原ひとつ家の図』です。
イメージの鬼ではなくて鬼婆なんですけれどね、これがもう怖い・・・逆さにつるされた妊婦の下で諸肌脱いだ鬼婆が包丁を研いで妊婦を逃すまいとにらみつけているっていう絵です。妊婦の腰巻の赤色がこれから起こる惨劇を暗示するかのような鮮やかさ見事なコントラストです。昨年、東京国立博物館で拝見してきたのですが圧倒されました。(浮世絵コーナーの中で掲げてある絵の中でこれが一番滞在している時間長かったですね)
芳年の傑作といえるでしょう。

余談ですが、責め絵で有名な伊藤晴雨はこの絵をみて自分の嫁さまを実際に吊るしてみてうーんあんな風になならんなーっと芳年の絵と比べたそうな・・・絵師の探究心には恐れいりますが吊るされた嫁さまお気の毒です。

歌舞伎や謡曲「黒塚」でも有名な話の一場面を描いた絵なのですが、今でも福島県二本松市には鬼婆の史跡がありますの興味のある方は是非といいたいところですがたいしたもん残ってないです。

芳年の世界が繰り広げられています。血みどろ絵で有名ですが、武者絵、美人絵、妖怪絵
も素敵です。

芳年妖怪百景

芳年妖怪百景

本物が見たい人は東京博物館へGO! 常設展示ではないので確認してから行ったほうが無難です。
http://www.tnm.jp/jp/servlet/Con?pageId=X00/processId=00

鬼にまつわる本おススメ

鬼譚

鬼譚

夢枕獏氏が新旧問わずに選出した鬼アンソロジー集、古典、小説、童話、マンガと多彩なジャンルからの鬼話が満載です。マンガで選出された手塚治のマンガは未来版SF奥州安達ケ原だったりします。坂口安吾小川未明筒井康隆、編者夢枕獏氏の鬼話どれもこれも鬼が繰り広げる夢の世界に引き込まれます。小川未明は「赤いろうそくと人魚」が選出されているのですが私のこわいものでろうそくっていうのが子供の頃からあります。久々に読んでこれが原点だというのがわかりました。とにかくくらーい雰囲気がはじめから最後まで流れていてろうそくが象徴的なんですねえ。誰が鬼でというよりも全体の雰囲気が鬼でろうそくみるとそれ思い出しちゃうって感じです。
筒井康隆の「死に方」もこれで久々に読みました。うちの会社にも鬼がある日きたらさてどうすっかなーと今必死に考えています。
最後の編者夢枕獏氏の解説も本当に思い入れのある作品を選んだんだなという愛情を感じます。

鬼でも一つ

夢々―陰陽師鬼談 (怪BOOKS)

夢々―陰陽師鬼談 (怪BOOKS)

鬼と言えば平安の安陰陽師安倍晴明。日本のプリニウス荒俣氏の描く鬼はどれも素敵です。荒俣鬼ワールドの心地よさをご堪能下さい。

鬼ではないのですが、鬼退治で有名な源頼光の子孫の源頼政は鵺(ぬえ)退治でこれまた有名なんですが、そのお嫁様が伊豆長岡出身とのことで伊豆長岡温泉では毎年一月に鵺ばらい祭りという素敵なお祭りがあるそうです。確か、水木しげる先生「怪」のレポートで見たのですが六匹のぬえちゃんズ(勝手に命名しました、またはダンシングぬえちゃんズ)が踊ったりして暴れまくっているところを最後は頼政に退治されてしまって降伏してめでたしめでたしするとか。ぬえちゃんズが愛らしくて可愛いですわ。一度行ってみたいと思う祭りです。
http://www.chiiki-dukuri-hyakka.or.jp/book/monthly/0107/html/egura1.htm

上のHPに写真があったのですが私が見た「怪」レポートのぬえちゃんズはもっと可愛かったんだけれどこれは可愛くないですねー。