水木版妖怪大戦争と妖怪ロード

荒俣版、妖怪大戦争の映画も見たことだしやっと水木御大の水木版妖怪大戦争を読むことができました。

水木版妖怪大戦争 (Kwai books)

水木版妖怪大戦争 (Kwai books)

これは水木御大ですからマンガです。おなじみの水木ワールド全開で妖怪達が大暴れをしています。見慣れたキャラクターも出てくるし、妖怪図鑑からそのまんま出てきた妖怪達もたくっさん出てきててんこ盛りのおなかいっぱいの妖怪ワールドを堪能させてもらいました。映画の話を骨子にしているので内容もわかっているのに楽しめるっていうのはすばらしいことです。水木先生の描く「件(くだん)」はとてもチャーミングで大好きです。

昔にはまった消えたマンガ家っていうシリーズ本があったのですが、水木御大のことがあって同時期の漫画家は消えてしまったけれども水木御大は貸本屋時代からのマンガ家でそこで鍛えられているから強いんだというくだりがあります。徳南晴一郎との違いという点はそのあたりか。累々の重なる死体となり抜け殻となっていく漫画家の中でいまだ第一線という強さの原点なのかもしれません。そしてそのパワーの源が今も見ることが出来る妖怪達なのでしょう。

消えたマンガ家―アッパー系の巻 (新潮OH!文庫)

消えたマンガ家―アッパー系の巻 (新潮OH!文庫)

 再販で文庫で出たんですねー。
ちなみにこの作者の大泉氏は
ワールド・ミステリー・ツアー13〈11〉アジア篇

ワールド・ミステリー・ツアー13〈11〉アジア篇

夢をコントロール出来るセノイの人々の世界へ水木御大をいざなっています。この表紙はバリのバロン神ですねー。このビジュアルいかしてます。

水木さんの妖怪ワールドがリアルに体験できるといえば鳥取県の境港ですが今年春にこの町の紹介本が出ました。境港市観光協会 | さかなと鬼太郎のまち 境港市観光ガイド 【境港市観光協会ホームページ】

こんなに楽しい!妖怪の町

こんなに楽しい!妖怪の町

内容紹介:年間観光客が百万人に迫る妖怪の町・境港。水木妖怪のブロンズ像が並んだだけで、静かな地方の漁師町がなぜ観光名所に? 水木しげるロードの全妖怪ブロンズ像と元にした原画をカラーで紹介。境港の妖怪観光案内もバッチリ

凄いなと巻頭からやられた気分になったのは全妖怪のブロンズ像写真と原画のカラー紹介。こんなにたくさんの妖怪が道にいるとは妖怪パラダイスですね。
しかも境港は観光客を受け入れをしているのですが、町をテーマパークのように商業主義にせずに昔ながらの生活に商いも生かしながら融合しているところがこの町が人を呼びまた町おこしとして成功したゆえんだというのを知りました。
水木さんの育った境港という町が懐の広い町であったかい町だというのが本を読んでいても伝わってきます。水木さんが妖怪の版権を自身でもっているので低価格で版権料を妖怪ロードのお店に提供しているっていうのも幸運だったひとつの理由ですね。

町おこしで何かを作ってもテーマをきちんと考えていかないとブームが去った後は忘れていかれてゴーストタウンになるだけです。人は飽きっぽいです。そしてリゾート地はいつしか忘れ去られるのです。80.90年代に作られたバブルのテーマパークなどが今、廃墟と化しているのもそんな一過性で作ってしまったものだからでしょう。ファンシーブームの雄、清里に何年か前に友人といったときは打ち捨てられたメルヘンな建物を見てそんな一過性の怖さを体感した記憶があります。

境港はそんな心配はなさそうです。町の人たちが妖怪を愛しているのがこころから伝わってきます。イベントなども本当に楽しそうです。水木しげる記念館もあるし、妖怪会議開かれるこの境港は妖怪の聖地になりました。
必ず私も行きますので妖怪ロードの妖怪さん達待っていてね!


<おまけの話です>
妖怪ロードのブロンズ像にもあって妖怪キャラとしても人気の高い「がしゃどくろ」は私も妖怪辞典で子供のころから親しんできたのですが、ここ数年浮世絵を見る機会が増えて歌川国芳の「相馬の古内裏」という浮世絵の名作品に出てくるでっかい骸骨に似ているなーと思っていました。というかまんまじゃないのかと・・・。やはり原点はこの浮世絵だそうです。この骸骨は解剖学的にみてもかなりきちんと描かれているそうです。↓で国芳の絵が見れます。
がしゃどくろ - Fantapedia~幻想大事典 - アットウィキ

ちなみにこのでっかい骸骨って誰かといいますと

平将門の遺子・瀧夜叉姫は謀反を企て、相馬の古御所にこもる。これをくじくために正義の士・大宅太郎がやってきて戦いとなる。瀧夜叉姫は普通ガマの妖術だが、なぜかここでは大ガイコツを出現させている。

なあーんとあの平将門なのです!
幼名も相馬小次郎だし相馬(福島県相馬市)とは縁が深いそーです。
将門の娘、瀧夜叉姫も私は好きな姫様です。
しかし、福島には戸隠の紅葉といい、二本松、安達ケ原の鬼婆といい、相馬の瀧夜叉姫といい素晴らしい美女が揃っておりますね。
この三大美女は全て浮世絵になっています。どれも秀逸の描写です。
紅葉      歌川芳年(一魁斎) 「美談武者八景 戸隠の晴嵐 」
安達ケ原の鬼婆 歌川芳年 「安達ケ原一つ家の図」
瀧夜叉姫    歌川国芳 「相馬の古内裏」

またもやオチが将門になってしまった(笑)