アトポス

廃墟写真ファンつながりの廃盤日記(増補改訂版)じみへんさんからご紹介をしていただいた島田荘司氏の長編小説です。早速地域図書館に予約をしてすぐに手にとることができました。

アトポス (講談社文庫)

アトポス (講談社文庫)

文庫本だとなんと900ページ以上(!!)に及ぶと聞いて最近そんな長編を読んでいなかったので心してかかったしだいなのですが、いやいやほーんとあっというまに二日間かかりましたが読み終えることが出来ました。

内容(「BOOK」データベースより)
虚栄の都・ハリウッドに血で爛れた顔の「怪物」が出没する。ホラー作家が首を切断され、嬰児が次々と誘拐される事件の真相は何か。女優レオナ松崎が主演の映画『サロメ』の撮影が行われる水の砂漠・死海でも惨劇は繰り返され、甦る吸血鬼の恐怖に御手洗潔が立ち向う。ここにミステリの新たな地平が開かれた。

上記の解説内容の本なのですが、今回、じみへんさんに教えていただくきっかけになったのはおよそ200ページにも渡る長い前奏として血まみれ伯爵夫人ことエリザベートバートリーの話が出て来ているからなのでした。
この本を読んで思い出したのはあのドラキュラ伯爵のモデルになったワラキア公とエリザベートバートリーは縁者だったということ・・・。ヴラド・ツェペシュ - Wikipediaまさに血のエリートというべき家系ともいえます。久々に読んだエリザベートバートリーの話は血のにおいが本から漂ってくるような描写でありました。

本編に重要な役割となるために長い長い前奏として置いたのでしょうが、多少の脚色はあれどかなり詳しいそして的確な補足があってこれだけでもひとつの物語として読むことができました。

この話がプロローグとなってハリウッドと死海で殺人事件がおこるという話なんですが、引き出しがたくさんあってとても面白かったです。
ハリウッドの話などはケネス・アンガーの名著「ハリウッド・バビロン」さながらの臨場感がありました。
サロメ」の映画撮影関係者にからんでの殺人になるのですが、サロメの脚本もなかなかです。主演女優のレオナ松崎のイメージはスコットランドと日本人のハーフということでオリエンタルムードのある美女だとするとイメージはやっぱりビアズリーの描く宿命の女「サロメ」の雰囲気と勝手に思い込み読んでいたのでこれまた凄く楽しんでしまいました。
結末はどんでんかえしの繰り返しですが、名探偵、御手洗潔が小気味良く解決してくれるので大団円の終わりにスカッとさせてくれます。

しかし、この長編を最後まで読者ひっぱってくる作者の力量は敬服しますね。