子供に語ってみたい日本の古典怪談

古典というとちょっと難しいし、文章も読みづらいと思ってしまうのですが、現代訳になっていれば読みやすいものです。
そんな堅苦しさを一掃してくれて、古典怪談をわかりやすく大人と子供が一緒に楽しめるのがこの本です。

子供に語ってみたい日本の古典怪談

子供に語ってみたい日本の古典怪談

子供に語る前にまず大人が楽しめること請け合いです。原文の文章、構成には読みやすいようにアレンジがほどこされているので、原文を読んだ人はまた新たに楽しめますし、はじめて読む人はもちろん楽しめるという趣向になっています。

「怨の巻」ではお化けの話を紹介、逆立ちになった女の幽霊がかたきを武士の借りて取り殺す話など、「怪の巻」では怪しい化け物たちの話で、有名な「耳なし芳一」などを紹介。「妖の巻」では「雪女」「ぼたんどうろう」などの美しい幽霊の話、「奇の巻」では人間のおこした奇奇怪怪な不思議な話、カメに唇を食われた男の話など、「悲の巻」ではたぐいなき自己犠牲の話「菊花の契り」「乳母桜」を紹介しています。

日本霊異記」「今昔物語」「徒然草」など平安時代あたりに書かれたものにも既に恐ろしい話がたくさんあるのです。この時代に既に怖い話をこういった風に残されているというは非常に興味深いものがあります。

江戸時代になると有名な「耳袋」、「甲子夜話」や上田秋成の「雨月物語」が書かれます。
この頃は口座も盛んになり、幽霊画コレクションでも有名な三遊亭円朝の「真景累ヶ淵」「怪談牡丹灯篭」なども生まれました。
私は雨月物語がとても好きで原文も読んでいるのですが、「吉備津の釜」、「青頭巾」「菊花の契り」久しぶりに読んでも怪談の怖さと凄みがありました。

そして、明治になり小泉八雲が収集した怪談集「怪談」が出版。怪談が文学に高められました。「雪女」など親しみやすい話が多くてこの本も確か私は小学生のときに読んだ思い出があります。

これだけの原典の本を全て読むのはとても大変なんですが、非常に読みやすくてわかりやすいのが嬉しかったです。解釈が日本の怪談というのは実におどろおどろしていて味わいがあります。

怪談ファンならずとも古典の入門書としておススメです。

※この本を読んでいる最中に上野国立科学博物館で「化け物の文化誌展」を見るという素晴らしいタイミングになりました。