遠野物語

伝承を文学にまで高め、そして民俗学という確固たる地位に押し上げた柳田国男の代表作品です。多くの作家たちに影響を与えた一冊でもあります。

遠野物語―付・遠野物語拾遺 (角川ソフィア文庫)

遠野物語―付・遠野物語拾遺 (角川ソフィア文庫)

確か遠野物語を知ったのは小学校一年生の時の夏の課題図書となった「オシラサマ」がはじめてだったと思います。絵つきで最後に馬ととも娘が天に登っていくシーンが長く記憶に残っていました。高校生くらいになって文庫本で読んでいたく大感動。河童はいるわ、山男、山女、マヨイガなどなど妖怪や不思議なものが大好きなので遠野が聖地に思えてしまいました。その後はちょっと中世ヨーロッパやアジア、南米などの不思議な話にはまった時期を経て30代になり改めて今まで散々読んできた日本の不思議な物語をもう一度、読み返しています。若い頃とは違った感動がそこにありました。郷愁とかノスタルジーそんな言葉では表現出来ないくらいの感動です。

まずは図書館で借りてきてのんびりと読んでいたのですが、何回でも読み返しが出来るのでネット注文をして買ってしまいました。一話一話が実に面白くて仕方ありません。ほんの短い話で全部で119話しかないのですが、その短い文章の中になんともいえない味があります。遠野という隔絶されていた山奥にカミがいて妖怪がいてと人々がいて当たり前に共存をしている不思議な空間の世界に思わずぐいぐいと引き込まれてしまうのです。
遠野物語を読んでいるとちょっと前まで日本人は当たり前にカミや不思議なものと向き合って、そしてあの世とこの世の境にも身近に生きてきたのだと感じます。
遠野物語を読んでいるとそんな部分を現代人がまた取り戻せるような気がしてしまうのです。

一気に読めばよいのですがちょっとずつ2話、3話づつ寝るほんの少し前に読むのがとても心地良いです。遠野物語拾遺も収録されているのでこちらもまた興味深い話がたくさんあるのでしばらくはこの心地よい寝しな物語が楽しめそうです。
幼少の自分、祖母にねだって昔話を寝しなに語ってもらうかのように一話の場面に自分の頭の中で映像を思い描く作業がとても楽しいのです。
                                 どんどはれ