遺品整理屋は見た!

私の生業は不動産業なのですが、人の人生に関わる仕事だなぁと思うと同時に昨今の高齢化社会、独居宅が増える時代において家にまつわる仕事は「死」にも関わるんだなよなとあらためて思います。

人の死というものは誰かに看取られて亡くなる場合ばかりではありません。一人暮らしをしていたとしたら誰にも気づかれないままなくなる場合も充分考えれるわけです。そうして死に方も病気や事故で亡くなる以外にも自殺というものまでさまざまな死に方があります。しかし、一人の人間が死ぬということで人間から一個の物質に変わったときにおこりえることは全ての人に平等です。それは腐敗・・・この臭いは嗅いだことのある人に聞いてみるととんでもないものらしいです。うちの業界でも何人か腐乱死体とご対面している人がいてすざまじい話をたまに聞くことがあります。

腐乱死体のあった室内はとんでもない臭いと人間の溶けた液体が床に散らばっている地獄絵図の様相なのだそうです。その状況では賃貸の場合は次の方に貸せるわけもないのでリフォームをすることになるのですが、一般の業者ではまずやってくれません。そんな室内を綺麗に掃除してくれて遺品整理までしてくださる会社が存在します。
キーパーズさんという会社なのですがそこの社長さんである吉田太一さんが書かれた本が今回紹介する一冊です。ブログの中に書かれたエピソードが書籍化されました。
http://blog.goo.ne.jp/keepers_real

[rakuten:book:11912199:detail]

孤独死、自殺、殺人…ひとごとのように感じられるかもしれませんが、それらはあなたの隣で起こっていてもおかしくありません。本書は、日本初の「遺品整理」の専門業者として、さまざまな壮絶な現場を経験してきた著者が記した46の「現実にある出来事」。あまりの凄まじさに「覗き見」の興味本位で読み進めていっても、そこからは現代社会が抱えている痛みや狂気が汲み取れます。圧倒的な読後感!

読み終わって改めて思うことは全ての話がこの日本で起こっている現実だということ。
人の死というものは昨今、余りリアルに見ることが無くなってきていますからかなりの衝撃を受けました。そしてこのお仕事をされていることに頭が下がるばかりです。
どんなホラー映画や血しぶきの吹き出る映像を見てもゼッタイに伝わってこないものをキーパーズの方は生業、お仕事として感じていらっしゃるのだなと思いました。
それは「臭い」です。前述したとおりの死んだ人間の腐敗臭というのは生ゴミの臭いくらいでは比べ物にならないものです。その中での作業をなさっていることに敬意と感謝をしなくてはならないのだよなと思いました。

そして、ビックリすることは例えば自殺の場合の例だとマンションから飛び降りて道路に落ちた場合その後の片付けは身内がしなくてはならないということ・・・、車の中での自殺などもしかりなのだそうです。
警察の方に「ハイ、後はよろしく」と言われてハイ、そうですかと身内の脳漿や肉片や血が飛び散るアスファルトや車を掃除できる猛者はそうはいないでしょう。そんな処理もひひきうけてくださるそうです。

しかし、この本を読むと節に思うのは飛ぶ鳥後を濁さずという言葉の通りだということです。生きているうちに荷物などはきちんとしておかないといけないんだなぁと。そして、自殺などをすると多大な迷惑がかかるということを知りました。自殺した賃貸物件の室内リフォームや損害賠償請求を大家さんは保証人や身内にしますし(不動産業者も義務として自殺などがあったことを次に借りる方に告知しますので商品価値も下がりますしこちらも死活問題です)、意外だったのは飛び降り自殺後のアスファルト掃除までも残されたものの仕事とは・・・。これは知らない人案外とおおいのではないでしょうか?

孤独死の話が多いので家族、職場、地域などと隔絶してしまうと現代社会ではあっという間に都会に住みながらも無人島のごとく孤独な状況に陥ってしまうのだなというのが痛烈に伝わってきます。
無人島から助かるには方法は一つ。自らが助けを求めることなのですが、それさえままならずに命を絶ってしまう方が多いのだとか。というかその方法を知らない人が増えてきているともいえます。
都会の中のジャングルを生き延びるにはサバイバル能力よりもコミュニケーション能力なのではないかと思いました。
コミュニケーション能力は実戦して人と触れ合わなければ養うことができません。日々生きている日常生活で学んでいけるものなのですが最近はどうも希薄になっているようです。
人との繋がりとは?ということを改めて考えさせられる一冊でした。