河鍋暁斎記念美術館

仕事が川口方面にあるときは休憩時間をはしょって行ってきてしまうのがここです。
河鍋暁斎記念美術館
http://www2.ocn.ne.jp/~kkkb/Kyousaij.html
8月には恒例のカエル尽くしの「「動 物 百 態」展/「第21回かえる」展」を見てきました。師匠が猫の国芳ならば暁斎はさしづめかえるの暁斎というくらいかえるの絵を擬人化した楽しい錦絵や下絵を残しています。そんなコレクションと合わせて、かえる友の会メンバーの愛蔵のかえるコレクションの展示もあってとても楽しかったです。

こちらは2ヶ月に一度展示内容が変わるのですが、7.8月がかえる尽くしということで9.10月は待ちにまった、「幽霊・妖怪大集合」展ということで行ってきました。
http://www2.ocn.ne.jp/~kkkb/imaj.html
(HPから作品の解説や作品を見ることができます。)
曇天の中、展示見学に向かいます。受付を済ませて中に入ると第一展示室に案内をしてもらいます。しかし、いつみても思うのですが暁斎の描写力は凄い。特に人体の骨格や筋肉など動きの描写が人体解剖図のように見事なんですね。そんな骨子で妖怪を描くのでリアリティが出てきて、躍動感が生まれているのだと思います。
「鬼と閻魔の相合傘」という作品は閻魔大王が美女に傘さしかけているというもの。相好崩したやにさがりの閻魔大王がユーモラスに描かれています。その横に立つ、澄ました美女の対比が素晴らしい。

大津絵の鬼を描いているものがありました。妖怪の中では鬼が出てくるものがとても多いです。暁斎の大津絵はこれまた独特の雰囲気で興味を惹かれました。

ここからは幽霊の絵になって暁斎の描く、「姑獲鳥(うぶめ)」です。顔を隠して空に飛び立つような女性の姿、既にこの世の人ではないはかなさと哀しさのある肉筆画でした。
姑獲鳥(うぶめ)というと月岡芳年の作品も後ろ姿なんですが妖艶さを漂わせている一枚なのですが、暁斎のものは哀しみの一枚に見えました。

圧巻だったのは幽霊図の下絵の数々。
「幽霊図」という作品は自分の妻が亡くなった時にその姿を模写して描いたといわれているものです。行灯の横で薄目を開いて骨と皮ばかりの髷を結った女性の姿は表情、姿全てが静かなのですが怖さ、凄みを感じるのです。原画の絵は作品集でみたことがありますが、色がない下絵でも充分に迫力がありました。
もう一枚は幽霊図下絵でライデン国立民族学博物館にあるというもの、柳のようにしだれてゆらりとしたポーズを取っている幽霊です。目をカッと見開いていて今にもこちらをぎょろりとにらみそうです。目だけが力強い。

さらにもう一枚、これは見覚えが?と思ったら、8月に全生庵さんで見てきた圓朝コレクションの画号と同じ、惺々暁斎のものでした。
全生庵HP 
http://www.theway.jp/zen/ 幽霊画ギャラリー25番目が惺々暁斎の幽霊画です。
解説にも雰囲気が似ているとあってやっぱりなと思った作品です。

そして最後にはガラスケースの中の展示で卒塔婆小町下絵画と九相図。
人が死んで腐り、土に還るまでの姿を描いたものです、卒塔婆小町の方は小野小町が亡くなってから土に返るまでの姿を克明に描いたもの。美しかった小野小町が骨となり、鳥についばまれている無常観のある一枚です。死ねばみな最後は同じ姿になるという自然界の残酷さというか平等さでしょうか。
九相図は水辺の二対の死体の絵。暁斎はゼッタイに死体を見てリアルに描いているだろうなという水死体の腐敗膨張具合。江戸の末期は幕末の戦乱で川に水死体などが身近にあったそうですから暁斎はスケッチなどをしていたのではないでしょうか。子供の頃に川にあった生首拾ってきて描いていたとう逸話をもつ暁斎ですからきっと当たり前に死体を見てスケッチする度胸はあるはずです。

これだけの第一展示室のボリュームに更に第二展示室にも作品があります。
こちらは明るい妖怪の絵が多く、百鬼夜行絵巻の一場面や、鬼や天狗、河童、鍾馗などが文明開化によって学校に行ったり、郵便夫になったりとさまざまな新しいことをしている風刺もちょっと入った面白い作品ばかりです。

そんな面白い作品をみて最後は見事な骸骨尽くし。
三味線を弾く骸骨、骸骨の首引き、笑う骸骨 、骸骨の宴会 、骸骨の茶の湯 、骸骨の見立花火 などの下絵。骨格標本が動き出したのではなかろうかというくらいの正確な人体骨格の骸骨たちがさまざまことの興じている姿は見事の一言でした。
これは下絵という状況なのでごまかしもきかないものです。正確な描写力というのが見事にあらわれていてここでまたもや画家河鍋暁斎の底力を見せ付けられたような圧倒感をかんじました。
この骸骨たちが実に楽しそうなので是非、手ぬぐいなんかでも売り出してもらえたら欲しいです。粋ですよこのデザイン。シンプルでモダンなんです。
師匠の歌川国芳の描いた相馬の古内裏の大骸骨も正確な骨格だといわれてますが、弟子の暁斎も同じく妖怪絵などを描いていても確固たるリアリティが根底にあるので現実味がある絵になるのだろうなとやはり骸骨をみても再認識。

第三展示室は今まで資料館だったのですが、リニューアルされて複製ですが、文読む美人図などの暁斎の有名な作品を紹介展示していました。

入り口にはミュージアムショップがあって(こちらもリニューアルオープンしました)暁斎の作品をあしらったグッズを買うことが出来ます。絵はがきの種類が豊富なのでお土産にいつも何枚か買ってきています。

これだけ見て最後に紅茶を頂いて、資料も読むことが出来て300円という値段はいつも申し訳ないと思ってしまうほど・・・贅沢な時間を過ごすことが出来る美術館です。