[本]てのひら怪談

冬は図書館に行く機会が増えます。静かで暖かいからなんですが、こんなどんよりとくもった凍えそうな季節には怪談がよく似合います。
寒いときの怪談というとこどもの頃読んで記憶に残っているのは雪おんなはもちろんなんですが私のナンバー1は「とっとりのふとんものがたり」です。
幼い兄弟が雪の寒さに震えてお互いを励ますセリフ
「あにさん寒かろう」「おまえこそ寒かろう」
が自分と同じ年頃であろう兄弟の過酷な運命と消えていく命を感じて強烈な印象を残します。そしてなんとももの悲しい。しんしんと雪の降る景色を見ると今でも思い出す物語です。大人になって小泉八雲の原作と知りました。
そういえば、小泉八雲が描いた雪おんなの怪談は東京の青梅宿が発祥なんだそうですね。雪国の話かと思っていたら以外や意外、東京の話と知りこちらも驚きました。

オンライン書店ビーケーワンが、加門七海福澤徹三東雅夫の三氏を選考委員に迎え、2003年より毎夏開催している「ビーケーワン怪談大賞」。応募作がネット上に順次掲載されていくというユニークなスタイルをとる同賞は回を追うごとに参加者の数も水準も飛躍的な向上をみせ、特に昨年の第4回では、投稿作が格段にレベルアップして話題を呼んだ。本書には過去の応募作の中から名作佳品100編を厳選収録。短歌や俳句に続く新たな文芸ムーブメント、ここに始まる!


掲載されている話は全て一定のルールに沿っています。800文字以内、原稿用紙2枚という文字数の規定です。その決まった文字の中に文章を織り込んでいるのですから圧縮された厳密された言葉の数々が並び、スペースさえも一つの間合いとして巧みに効果的に使われています。文章が長くなってしまうと恐怖までのスパンが長くなり中だるみをしますが、800文字だと読んでせいぜい3分から5分その間にドカンとくるというわけです。まさに最速型の恐怖。厳選している文章だからこそ、読み手にも読解力と想像力を必要とされるのもまた楽しかったです。

てのひらに乗るくらいの恐怖がそのうちにウブメに預けられた子供のように読みすすむうちに、そして少し時間を置いてからズシンと重さを感じるようになる怖さがやってきます。
恐怖に耐える力持ちでないと思わず倒れそうになるほどの話もあって怖さ満載でした。

文章が長くなりがちな描写力のない私としてこういう風に凝縮して物語を書ける方たちが非常に羨ましいです。いろんな言葉を集結して羅列して描写した文章よりも的確な描写の一文、そんな文章が書けるようになりたいなぁと思いました