東京国立博物館 対決巨匠たちの日本美術

うだるような暑さの昨日、上野に行ってきました。
目指すは東京国立博物館、この夏、待ちに待った企画展が催されています。
対決 巨匠たちの日本美術
http://www.tnm.go.jp/jp/servlet/Con?pageId=A01&processId=02&event_id=5315

古今東西の日本美術史を彩る絵師、仏師、陶師たちの作品を二人ずつ組み合わせて対決させるという趣向。
12組の計24人の対決です。
対決する巨匠たちをラインナップすると
運慶VS快慶、雪舟VS雪村、永徳VS等伯、光悦VS長次郎、宗達VS光琳、仁清VS乾山、円空VS木喰、大雅VS蕪村、若冲VS蕭白、応挙VS芦雪、歌麿VS写楽、鉄斎VS大観
ざっとこんな感じです。一人でも充分に展覧会出来るクラスの人たちが集結ってスゴすぎですわ。展示品は国宝10余件、重要文化財40余件の計100余件という豪華さ。

来場者は平日にも関わらずにかなりの人手で大賑わい。
運慶、快慶の仏像から始まり、鉄斎、大観の見事な屏風絵で終わるのですが、見所がありすぎて嬉しく困ってしまいました。
中でも楽しみにしていたのは辻惟雄の著書、「奇想の系譜」で知った画家の曽我蕭白。一番有名どころでもある「群仙図屏風」が目の前にってな感じです。
画集や写真で見るよりも何倍も何倍もインパクトのある屏風絵でした。困った顔した龍といい、仙人、稚児、天女全てがなんというか面白すぎなんです。ちょっとゆがんだ鏡を見ているような感覚といいましょうか、とにかく引き込まれて釘付けになるんですねぇ。
対決する伊藤若冲も華麗な美しい花鳥図を描くのですが、こちらもまた一点に向かう集中力、執着心があらぬ方向へと行きそうになっているくらいの細密さでイイです。
「仙人掌群鶏襖図」の鶏の細密な描き方は息を飲む暇を与えないくらいの濃密さ。たまりませんねぇ。

虎対決もありました。

応挙の描く虎と芦雪の描く虎。
応挙の虎は昨年、金刀比羅宮の襖絵で見ているのですがそれが印象に残っていました。そして今回の虎を見てみると更になんというか面白くなって可愛くなっています。金刀比羅宮の虎も充分可愛いなぁと思っていたのですが、こっちの方が方が妖怪チックなくわっとした口の開き方といいたまりません。
そして、対する芦雪の虎、こちらの襖絵は日本で一番大きな虎を描いているのだそうです。少し離れてみてみるとやはり可愛いという感じの虎なんですが、憎めない感じで良いです。

そして浮世絵ファン必見の対決は歌麿VS写楽
東京国立博物館に三年ほど通って初めて私は写楽の浮世絵を見ることが出来て大感激でした。有名な大首絵の三代目大谷鬼次の奴江戸兵衛や市川蝦蔵の竹村定之進、豪華な背景の雲母刷りが見事な浮世絵です。見ていると写楽のリアリズムの表現力に圧倒されますね。
そして、対する歌麿、繊細なまでの江戸の女性の美しさ、艶やかかさを日常の動作から見事に描きだす技量が素晴らしいです。顔の美しさもさることながらしぐさの美しさが歌麿の真骨頂でありましょう。
写楽は歌舞伎役者を描くときも脚色はせずにそのままずばりと描いてしまいます。なので例えば女形の絵などは男性顔のごつごつさまで描いてしまっているのですが、歌麿の絵は美しく描かれていて実にこの二人対照的な描き方をするなぁと展示作品をみてあらためて感じました。

今回の展示の最後の対決は鉄斎VS大観だったのですが、横山大観描く「雲中冨士屏風絵」は「こりゃ参りました」という感じになる素晴らしい屏風絵でした。この表現力はやはり只者ではありませんね。

どうしても見たかった俵屋宗達VS尾形光琳の「風神雷神」の屏風絵は8月11日から17日までの限定公開なのでもう一回来てみようと思っています。

おまけ 
常設展でもいろんな注目展示がありました。
運慶の対決出品の地蔵菩薩坐像を安置している京都の六波羅蜜寺の仏像展示とあのサザビーの高額落札オークションで有名になった大日如来坐像が展示されています。小さな仏像ながら見事なものでこちらも必見です。
浮世絵のコーナーではなんと葛飾北斎の怪談絵「笑いはんにゃ」「皿やしき」「こはだ小平次」「お岩さん」が展示してあります!こちらも素晴らしいです。
歌川国芳の「百物語・化物屋敷の圖 林屋正蔵工夫の怪談」もあり夏に向けて納涼の趣向が心地良いです。

表慶館では
日仏交流150 周年記念 オルセー美術館コレクション特別展
フランスが夢見た日本―陶器に写した北斎、広重
http://www.tnm.go.jp/jp/servlet/Con?pageId=B01&processId=01&event_id=5558
という展示会も開催中です。
日本の浮世絵、北斎、広重の図案が転写された皿の展示です。
北斎、広重の他に河鍋暁斎の図案も皿になっていて興味を惹かれました。

この暑い日ざしに東京国立博物館では日傘の貸し出しサービスをしていました。こういったはからいはとても嬉しいです。