目玉の思想 図像学入門

大好きな荒俣宏先生の講義が書籍化されたものです。
1991年7月から92年9月まで、テレビ東京の深夜放送で毎週金曜日に30人の生徒が30分間の講義を学ぶという番組だったそうな。記憶にありません。でもこんな夢の講義があったとは受講生の皆さんがうらやましい限りです。

第一講から第四講までの4つの講義なのですが、絵、図、つまり図像の見方を教えてくれるのですね。具体的な図像を例にとって例えばロールシャッハテストやアンチンボルドーのだまし絵や絵画など面白い絵を集めて説明をしている第一講は絵というのは見方をひとつにすると真理が見えてこない、面白さを教えてくれています。固定観念を強くもっていると見えないのですが、ちょっと柔軟にするとたくさんの可能性がある図像の面白さです。

第二講義は「見るな読め」です。図像を見るなとは?とお思いでしょうが、中世のヨーロッパの絵画鑑賞っていうのは教養の高さを表していたんです。画家の技法の素晴らしさはもちろんですが、使われたモチーフや題材からその絵の意味を読み取ってこそ絵画のよさがわかるという高度なものだったのです。それがわからないと絵をみても意味がわからないというわけです。
静物画で魚が出ていて上手に描けているなーだけではダメで、魚とはキリストをあらわしているからこの絵はキリストのエピソードの暗示で・・・と読み解いてこそ絵画鑑賞、図像の意味を持つということになるのです。西洋で発達した寓意画というもの楽しみ方です。

そして第三講は図像崩壊、有名なエッシャーの絵などを紹介し、最終講では商業マークの変遷(グリコや森永のエンゼルなど)の図像からそのどうしてこの図像になったのか、そして時代背景や企業の意味を読み取っていきます。
ここで仁丹などの薬屋さんの図像があったのでこの本を読み終えた後に、読んだのが下の本です。

正露丸のラッパ―クスリの国の図像学

正露丸のラッパ―クスリの国の図像学

クスリのパッケージの変遷をカラー図版を見ながら由来などを知ることができます。
この本で正露丸日露戦争のときに兵隊さんのために陸軍が開発したというのを知りました。ああ、だからラッパの図像が意匠に使われたのだと読み取ることが出来たのです。
正露丸という名前も征服する露西亜ということで元は「征露丸」だったとか。
うーん奥が深い話です。
クスリのパッケージや袋には鬼や妖怪が退治される図像、動物だと熊、虎、兎、竜などたくさんのキャラクターがあったそうです。
こういうのを見ると今のパッケージというのは味ないなと思ってしまうのですね。富山の薬売りの紙風船や絵紙も今もしあったら欲しいなと思ってしまいます。
絵紙というの江戸時代からあったおまけだそうで、人気役者の芝居絵や福神などのおめでたいものを描いたもので、チープな浮世絵みたいなものだったそうな。コレクションが残っているのであれば見てみたい一品です。

日ごろ、生活している中で毎日たくさんの図像を見ているのですが、この二冊の本を読むと一瞬の通りすがりで流し見をした毎日から、この絵の意味は?とちょっと立ち止まってみたくなります。