国立西洋美術館と上野の森美術館

水曜日の秋雨前線の中、上野に行ってきました。
上野駅公園口を出るとそこは雨模様。都会の汚れを洗い流すかのような雨がしとしと降り注いでいます。
国立西洋美術館では特別展「古代ローマ帝国の遺産、栄光の都ローマと悲劇の街ポンペイ」が行われていました。
公式HP  http://roma2009.jp/index.html

古代ローマ帝国の都、ポンペイ。この名前は子供の頃に火山に埋もれてしまった街として本などで良く目にしました。一瞬にしてベスビオ火山の噴火により厚さ5mもの火山灰に埋もれてしまったという悲劇が起こったことを今も記憶しています。
そんなポンペイの街は被災する前には非常に栄えそして優れた美しい都市だったそうで、発掘されたたくさんの遺跡が展示されるというのでとても楽しみでした。

展示室は、帝国の誕生、アウグストゥスの帝国とその機構、帝国の富と3つのテーマにわけて展示してありました。
まず目を見張ったのは素晴らしい造形の大理石の彫刻の数々。見事な立体でどの面からみても遜色のない出来にこれが2000年以上前に造られたものとは思えません。
大理石という冷たい石のイメージは神と同じ位置に値する皇帝にふさわしい素材でありましょう。女神の像もまた美しいものでした。
フレスコ画も色も鮮やかに残っており、これもまた素晴らしいです。みどころでもある青銅像の「アレッツォのミネルヴァ」。これは必見の価値ありです。

そんな素晴らしい美術品の数々の中で目を魅かれたのが壁に描かれた壁画「庭園の風景」とモザイクの噴水でした。
当時の豊かな生活が手にとるような美しいもので、しばらく見入ってしまったほどです。

特別展の後には、常設展も見てきました。
新館がオープンしたので以前よりもたくさんの絵の展示がされています。
世界の巨匠の作品が一同に介していて、見所ありすぎて困ってしまうほどの充実感です。
これで入場料が420円って安すぎてありがたいです。
一番最後のモネの部屋、優しい淡い色に包まれて凄く気持ちの良い空間でした。

次に向かったのが、同じ上の公園内になる上野の森美術館です。
こちらでは「聖地チベットポタラ宮と天空の至宝」展が開催されていました。
公式HP http://www.seichi-tibet.jp/

上野の森美術館は実は今回が初めての来訪なんで楽しみでした。
入り口からチベット色溢れるもので期待が膨らみます。

中に入ると、おみくじが引けて自分の守護神が出てくるというものがありました。
私が引いたものダーキニー、日本の狐に乗った女神、荼枳尼天のもとになった神様です。

チベットというとダライ・ラマポタラ宮
あの高い山の上の絶壁にあるポタラ宮はまさに天空のお宮です。
仏像がたくさん展示されていました。どれもこれも黄金に輝くものばかりです。
日本の仏像と違うのは衣の表現がなんとも艶かしいような肌にはりつくような質感で表現をしているところでしょうか。
仏像以外にもタンカという布で出来た仏画があるのですが、これがまた素晴らしい。
信仰の篤さが伝わってくるような名品の数々でした。
チベット密教の美しさは色合いですねぇ。みとれてしまいます。
そして、マハーカラの大きな立像。これはカッコいい。こういうデフォルメ感が私は好きです。

チベットの暮らしという展示では各寺院で行われるチャム(跳神舞)という護法神や忿怒神の仮面をつけた僧が舞うときの装束や仮面を展示してあるのですが、これが見事に死の姿などの表現していて色彩鮮やかで美しかったです。その中で鳥葬をあらわしたものがひとつあったのですが、チベットというと鳥葬を思い出してしまうくらい子供の頃見たドキュメント番組の映像が忘れられない思い出となって焼きついていたので、これをみたときは昔の記憶が呼び覚まされたようにハッとしました。まさにあの怖さがそのまま。
そういえば、ポンペイの街と同じようにチベットも子供の頃に読んだ本で知りいろいろ夢を膨らませたものでした。

この素晴らしい文化をいつまでもこのままで残して欲しいです。チベットに平和が訪れることを願いながら会場を後にしました。

考える人は雨の中でも考えていました。
平和を願って憂いているのでしょうか。