東京国立博物館特別展、皇室の名宝

上野公園の秋は深まってゆくばかり。美術館から博物館へハシゴです。東京国立博物館で素晴らしい特別展あると知りやってきました。
御即位20年特別展 皇室の名宝HP http://www.bihana.jp/

雨が降り続いています。

中に入ってみると特別展示が行われている平成館に向かって人々が歩いています。

看板だけもわくわくしますね。
今回の展示は1期、2期と分けられており1期にあの伊藤若中の作品が出ると聞いていたので指折り数えて待ち構えておりました。

会場にはいると午前中なのにたくさんの人です。とはいえ歩く場所がないわけでもなくほどよい混雑具合です。なのでのんびりと鑑賞ができました。これは嬉しい。
第1章は近代絵画の名品と題して、ポスター看板にもなっている獅子が大きく描かれている、狩野永徳、加納常信の「唐獅子屏風図」です。渋みのある色合いに獅子がバランスよいです。右側が永徳の作品で左側にもう一双あるのですがこれはひ孫の常信が描いたもの。
見比べも楽しいです。

そしてため息がでるような展示を見ながら進むと、そこに見えたのが、伊藤若冲の「旭日鳳凰図」でした。
どこまでも細かい描写の鳳凰は今にも一声鳴いて画面から飛び立ちそうな雰囲気です。現実でない世界がリアルに見えるそんな一枚です。

そしてそして、動植綵絵!30幅の連作です。若冲が1758年ごろから10年の歳月をかけて完成した花鳥画なのです。
もともとは釈迦三尊像3幅とともに相国寺に納められていたものですが、廃仏毀釈を経て現在は宮内庁所蔵となりました。
フロア全部が動植綵絵なんですが、まずはじっくりと一枚一枚を見て回りました。
どれもこれも細かい描写で描きこまれていて、この集中力は一体どこから湧き上がってきていたのだろうかと驚愕をします。とにかく花一枚、葉一葉、羽一枚をひとつひとつ丁寧に描き揚げた集大成がそこにありました。
鶏の描写はまるで生きているかのようです。先日、地元にある狭山市立智光山動物園にいろんな種類の鶏たちを見てきました。改めて鶏たちを見ているとしみじみ自然の作り出す造形の美しさを感じていて若冲の描く鶏たちみたいだと思っていました。
そんな記憶を思い出しながらみても全く遜色のない鶏たちがそこに描かれていました。
そんな植物、鶏などはリアルなんですが、逆にリアルなんだけれど、どっか不思議というのは若冲の描く水の世界です。
蓮池遊魚図の鮎たちはまるで飛んでいるみたいだし、蓮の葉も宇宙空間にあるもののよう。群魚図は並んだ魚には海、川の両方の魚一緒に泳いでいます。貝甲図はまるで標本箱のよう。京都生まれの若冲は海をしらなかったのではと言われています。
でもこの世界観がなんとも箱庭のように見えて凄く楽しい構図になっていて飽きさせないのですねぇ。
近くで見た後にフロアの真ん中あたりから遠くに視点を置いて30幅の絵を見るとこれがまた凄くいいんです。色が目にスポーンと気持ちよく入ってくるんです。近くも良し、遠くも良しなんですねぇ。

先日、テレビ東京美の巨人たち若冲が取り上げられていたのですが、京都の錦小路の青物屋の若旦那という恵まれた家系のおかげで、紙、絵の具画材に関しては糸目をつけず、ほしいものを取り寄せて使っていたそうな。好きなものを好きなだけ・・・才能も溢れるばかりにあってと全く持って羨ましい限りの絵師だったそうな。

続いては丸山応挙です。応挙の描く絵はどこかいつも優しいなぁと思います。応挙の虎はいつみても愛らしいです。

そして、更に進むと人だかりが出来ていて、見るとそれは岩佐又兵衛の絵巻「小栗判官絵巻」でした。岩佐又兵衛もまた若冲と同じく細かい描写を描く絵師です。平安ものの絵巻が色鮮やかで目にまぶしいほど。人垣が動かずにじっくり見られなかったのが凄く残念。

そんな岩佐又兵衛の横になんと葛飾北斎80歳の時に描いた肉筆画「西瓜」がありました。
ただただ静かな空間が広がる一枚です。西瓜に神聖を与えることができるというはやはり天才北斎のなせる業なのでありましょう。

他にもたくさん、横山大観の朝峰霊峰の大きな屏風に描かれた富士山の神々しさに思わずたたずみ、長澤芦雪やら絵画以外にも見事な工芸品がたくさんあってどこを見ても見尽くせないほど名宝という名にふさわしい展示が目白押しでした。皇室の名宝これは一見の価値があります。まさに目の保養。

常設展もちょっとだけ見てきたのですが、なんと皇室の名宝展にも出ていた、高村光雲の「老猿」が展示してありました。はじめてみましたが見事な描写ですねぇ。

そして、岸田劉生の「麗子微笑」も。

東京国立博物館、やはりあなどれません。