東京カルチャーカルチャー 水族館ナイト1周年祭り!

実りの秋が深まる10月25日の日曜日、お台場にある東京カルチャーカルチャーにて素敵なトークショーが行われました。
水族館ナイト1周年祭り!水族館に宿る魂

今回で4回目となるトークライブの1周年を迎えてまさに実りの秋にふさわしい爆笑トークの大収穫祭です。開演前に中村先生みーつけ。


第一部はテリー植田さん、中村元先生、まんじまるさんの3人での今までの水族館ナイトを振り返ってのトークです。
 

会場で取られたアンケートの集計より水族館ベスト10を発表。

6位には第2回参加のフグに特化した、しものせき水族館海響館2009-02-22 - monksiiru(もんくしーる)の日記、10位には第3回参加のクラゲに特化した、鶴岡市立加茂水族館2009-06-07 - monksiiru(もんくしーる)の日記がランクインしました。

第3位は鴨川シーワールド、第2位は新江ノ島水族館、そして、今回堂々の第1位は、沖縄美ら海水族館でした。
   

ランクインした水族館はどれもこれも個性派が勢ぞろいです。

水族館Q&Aのコーナーでは、日本の水族館と外国の水族館の違いなどの質問が出ました。
アメリカなどでは寄付や税金(支払った人が税金の使い道を選べる)などで水族館が作られているそうなので、日本もそういう風になればもっと素晴らしい水族館が出来るのではないかとおっしゃっていました。
自分の払った税金の使い道、そんな事業に使うことが出来たらいいですよねぇ。

そんなこんなで休憩を挟んで第2部がはじまりました。
スペシャル対談 中村元×荒俣宏と銘打って屈指のアクアリストである荒俣さんをお迎えしてのトークライブです。動物誌のゲスナーの人魚の図像からはじまるというインパクト大のオープニング。荒俣コレクションの中から人魚の図像がこれでもかと出てきます。
なんでも中村先生と荒俣さんは20年来のおつきあいだそうで、鳥羽水族館に荒俣さんが人魚(ジュゴン)を見に訪ねてきたのがきっかけだったとか。そんなわけで、古今東西の人魚についてのトークがはじまりました。
 

トークの進行途中に見覚えのあるものが、ジェニーハニバーではないですか!人魚のミイラと言われているものです。

荒俣さんは3個くらい持っているそうです。いいなぁ。

人間と魚の半身の人魚の正体とは?と話は進んでゆき、艶かしい美女の人魚の原点とはジュゴンマナティではなくて深海魚のリュウグウノツカイではないかと真相に迫ります。

リュウグウノツカイは深海魚で地震などの天変地異があると水面に上がってくるといわれています。その姿はしなやかで美しく、艶やかなラメのようなウロコが全身にあり背びれは赤く、目も大きくて愛らしく人のよう、この姿で海面に出てきたら女性が顔を出したと思ってしまうのではないかというのです。
そして、ヨーロッパや日本に伝わる人魚伝説は天変地異の前触れを昔の人たちは知っていたという証拠ではないかというのです。これは実に興味深い話です。

ちなみにそんな人魚ですが、その神秘性から薬になると信じられており、ヨーロッパでは腹下しの治療に飲まれていたそうです。
日本でも人魚のミイラなどを煎じて飲むというのを聞いたことがあります。
荒俣コレクションの図像で日本の人魚、ヨーロッパの人魚がたくさん紹介されていました。
   


人魚の図像が時が時代を経てゆくとどんどんセクシーになってゆくのが見ていて面白かったです。

人魚というと、カッパも同属になるのでしょうか。
カッパを見たことのある中村先生のトークもヒートアップ。カッパも人魚のミイラと同じく、ミイラが日本にはたくさん伝わっています。河童の図像を2点見たのですが、どちらもいい味わいの日本画で引き込まれてしまいました。
   

そういえば、私10月20日川越祭り見世物小屋でカッパのミイラみましたっけ。
2009-10-19 - monksiiru(もんくしーる)の日記

ここで裸婦の図像が出てきます。
日本では近代まで日常生活の中では行水などで女性の裸が溢れているのに対し、画壇界で裸の女性を描くのはご法度でした。そんな中、明治に入り西洋画がたくさんやってきて西洋画を学ぶものが増え、日本でも裸婦が描かれる時代が到来します。黒田清輝の裸婦像が世に出たときは世間は衝撃を受けたそうです。(図像紹介に使われていた知・感・情は春に東京国立博物館で展示されていたのを見ましたが、堂々たる裸婦像に神々しさを感じる作品で一見の価値ありです)
 

裸とは野性の象徴、ワイルドなもの、つまり命の象徴でもあるのですが、野蛮ととらわれてしまった結果隠すものになっているのでしょう。
しかし人はそんな生命の象徴、野生を忘れてはいません。水族館に訪れて海の生き物にその昔の姿を見出しているからこそ水族館にまた行きたくなるのかもしれませんね。
半身が人、半身が魚の人魚は人と野性の橋渡しをする役割を担っているのかもしれません。

荒俣さんはヨーロッパの水族館にも詳しいそうです。イタリアには中世の時代に戒律の厳しいカトリックの教会の地下などにグロッタという洞窟庭園を作ったそうです。洞窟庭園に水を引きそこで貴族たちは異次元の世界を楽しんだそうです。作りはさまざまな趣向を凝らしてあって池の下に作り、水を下から眺めるようなガラスをはめ込んで太陽光の日差しを写し込んだりととても美しいものだとか。そんなグロッタをお手本にして19世紀の水族館は作られたそうです。ちょっとどきどきするような薄暗い洞窟のような装飾の図像を見みるとなるほどこれは凄く楽しそうです。
 

このグロッタを飾る文様があるのですが、植物、人、動物が連動する奇妙な文様です。
このグロッタ文様こそが、グロッタの本質である全ての命は繋がっているという生命マンダラの象徴なんだそうです。まさに古代アニミズムの世界です。
グロッタの図像や解説を聞いていてふと思いだしたのが日本のお寺地下にある真っ闇を歩く戒壇巡りや洞窟などをくぐりぬける胎内巡りです。仏教の輪廻転生を意味しているのですが、グロッタもそんな生命のサイクルを表現しているように思えてなりませんでした。
 

グロッタのからはじまった水族館はまさに古代アニミズムの系譜を引き継ぎ、これからも私たちにたくさんの異次元の世界をそして、命の象徴を見せてくれることと思います。
 

書き足りないことがまだまだたくさんあるのですが、水族館ナイト1周年、大豊作の2時間半でした。満足満足。