江戸東京博物館特別展「五百羅漢−増上寺秘蔵の仏画 幕末の絵師 狩野一信」

上野の次は両国に足を伸ばしました。
両国につくとたくさんのお相撲さんたちを見かけました。そういえば国技館で場所開催しているのですね。お相撲さんたちが通り過ぎると鬢付け油のかぐわしい香りがします。なんとも良い芳香で心奪われてしまいました(笑)
そんな国技館の隣にあるのが江戸東京博物館です。
http://500rakan.exhn.jp/
いつみても足が出て歩き出しそうな建物だと思います。
カエルの顔に見えるのは私だけ?・
 

お目当ては先日5月7日にテレビ東京美の巨人たちでも放送されて紹介された狩野一信
http://www.tv-tokyo.co.jp/kyojin/backnumber/110507/index.html

特別展 「五百羅漢−増上寺秘蔵の仏画 幕末の絵師 狩野一信」を見にやってきました。

100幅になる羅漢図が全て公開されるのは今回は初めてなのだとか。

こちらでも音声ガイドを借りてみました。ナビゲーターは大滝秀治さんです。秀治さん自らが501人目の羅漢様となって語る解説は絵の中から話しかけられているかのようでとっても楽しかったです。

中に入ってみるとたくさんの人で賑わっています。ちなみに昨日はシルバーデーだそうで65歳以上の方が入場無料とのこと。確かに年齢層が高いですわ。

10年間の歳月をかけて一信が描いたまさに奇想の100幅がそこにありました。
作品はとても大きいです。なので近くで見て、そしてまた下がって見たりしていろんな角度から鑑賞を楽しめます。画面いっぱいに隙間なく細密に描いてあるので目の許容量を超える情報量が一気に入ってきて目が痛くなるほど・・・。
1幅から10幅くらいで既にこんな状態です。

といいながらも見ずにはいられないのは、圧倒的な上手さで思わず見入ってしまう。羅漢様たちの表情の豊かなこと、なんとも言えない優しさが伝わってくるし、花鳥の表現も卓越しているそして、構図の面白さ。飽きないのですね。

特に見入ってしまったのはやはり地獄21幅から40幅までの地獄、六道です。
羅漢様が地獄に落ちた亡者たちを救おうとしている場面なのですが、地獄の世界観がたまらなくリアルに恐ろしく、そしてダイナミックです。特に、第22幅は圧巻。
隣で見ていた老夫婦のご主人が地獄の亡者を見てポツリと一言。
「きっとこの時代にはまだ飢えが当たり前にあって餓死したりして死んだ人がたくさんいたんだろう。一信はきっとそれを見ていて描いたに違いない」と。

10年にも及んでまさに魂を削るように羅漢図に取り組んでいった一信は次第に心を患い絵筆を握れないくらいになってしまったそうです。なので後半になってくると、羅漢様が随分と小さく描かれていき、顔の表情も初期とは違ったものになっていました。一信が弟子を指示して描かせていたそうな。
100幅の目前の96幅で亡くなってしまったので最後の4幅は妻の妙安と弟子で完成をさせたそうです。まさに魂を注ぎ込んだのでしょう。

増上寺の羅漢堂では100幅の羅漢図は飾りきれないので一度に飾ったのは8幅くらいなんだそうです。なので今の時代に見られたということは至福のことなのですね。本当にありがたいです。