メリーさんからエンドレス・ワルツまで

以前に昭和の横浜に存在した伝説の人、メリーさんの映画「ヨコハマメリー」を紹介したのですが2009-12-24 - monksiiru(もんくしーる)の日記その後も横浜について調べてゆくうちにメリーさんより更に前の明治の頃の本牧に伝説の娼婦と呼ばれた人、メリケンお浜さんがいると知り横浜の歴史をさかのぼるようにしていろんな本を読んでゆきました。

消えた横浜娼婦たち 港のマリーの時代を巡って

消えた横浜娼婦たち 港のマリーの時代を巡って

メリーさんのことがとても詳しく書いてあります。そしてメリケンお浜さんのことも。読み応え十分の裏の横浜史が詰め込まれていました。

メリケンお浜さんに関してはマンガになっています。

以前にTBSラジオのキラキラでビビる大木さんがこのマンガの紹介していたので調べてみたらなんとお浜さんの話だったのでビックリ。上村一夫の絵はどうしてこんなにシャープでカッコいいのでしょうか。切り絵に通じるものがありますよねぇ。

そんな中で最近読んだのが、

天使はブルースを歌う―横浜アウトサイド・ストーリー

天使はブルースを歌う―横浜アウトサイド・ストーリー

この本の中にもメリーさんが登場します。そして同時進行に出てきたのがゴールデン・カップスゴールデン・カップスがらみで小説家の鈴木いずみのことが書かれてあって興味を持ち、調べてみたら彼女のことを題材にした小説(稲葉真弓のエンドレス・ワルツ)があるというので読んでみました。あまりにも激しい生きざまに読んだ後にどっと疲れが出てきます。本能のむき出しをするために命を削る姿がこちらにまで伝わってきて辛いし痛い。そして最後にしんどさとやりきれない疲労感と空虚感が残ります。
映画にもなったそうで一昨日にレンタルDVDで見つけたので早速、借りて見てみました。
あの頃映画 「エンドレス・ワルツ」 [DVD]

あの頃映画 「エンドレス・ワルツ」 [DVD]

80年代の原宿が懐かしいですねぇ。
今は亡き同潤会アパートのあたりとか、駅前とか。80年代の街並みの風景がなんとも懐かしくて引き込まれてしまいました。
鈴木いずみと阿部薫の暮らすアパートメントの建物、内装、白いペンキの壁とかタイルのキッチンとか木枠の窓とか・・・今みるととてもモダンです。米軍ハウスみたいな感じでしょうかね。今時のマンションのコンクリートつくりとは違って、なんか建物が冷たくないんですね、温かみがありました。
主人公の鈴木いずみ役の広田玲央名。ちょっと舌っ足らずのしゃべり方と子猫のような感じが最高にキュートです。洋服も70年代ファッションが実にフィットしていてカッコいい。
夭逝の天才サックス奏者の阿部薫役の町田町蔵もいい感じで天才らしい狂いっぷりのギリギリさを演じていて好演でした。町田町蔵の目つきが本当に怖いんですわぁ・・・。

究極の愛の表現は足の指を切っちゃうとか常識からかけ離れた夫婦でしたが、お互いを愛していたのではないかと思います。でも両方とも不器用だからうまく表現できなくて近づくと傷つけあってしまっての繰り返しだったのではないかと思いました。そう思うとこの夫婦って何とも切ないんですよねぇ。結末もいずみの自殺という形で終わりますしね。
凡人には当たり前に生きていける日常のひとつひとつが天才には生きづらいのだろうなぁと。私はつくづく凡人でよかったと思います。
これを機会に鈴木いずみの小説を読んでみようかなぁとぼんやりと思ったのでした。