デンデラ

以前に岩手を旅したときに訪ねた遠野の地。
遠野物語の世界が今も残る場所でした。そして、その時に訪れた場所のひとつにデンデラ野という場所があり、ここは60歳を過ぎると老人を捨てていた姥捨ての地だったとか。
小高い丘陵にあるデンデラ野は村を一望できる場所にありました。
捨てられた老人たちはここで死を待ったそうですが、どんな思いで村を見下ろしていたことでしょうか。

デンデラという言葉はこの風景とともに強烈な印象が残り、妙に耳に残っていたのですが、昨年テレビで「デンデラ」というタイトルの映画が公開されると知り見てみたいなと思っていました。
結果・・・一年たってレンタルDVDで見ることと相成りました。

デンデラ [DVD]

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主人公の斉藤カユ(浅丘ルリ子)は70歳になり、村のしきたり通り息子に背負われてお山参りと称して、お山に捨てられてゆきます。極寒の中に一人残されたカユはお山で死に極楽浄土に行けると寒さの中で祈りながら意識が薄れていったのですが、目が覚めてみるとそこは極楽浄土ではありませんでした。
カユは老婆49人が暮らすデンデラに助け出されていたのでした。デンデラはカユよりも前30年も前に三ツ屋メイ(草笛光子)がたった一人から作り出したお山のその奥にある老婆だけの集落です。ここにはカユの親友で先にお山参りに行っていた黒井クラ(赤座美代子)やもっと先にお山に入っていた椎名マサリ(倍賞美津子)、浅見ヒカリ(山本陽子)らが皆で寄り添って暮らしていました。ここでは皆が平等でした。
カユが50人目のデンデラ入りとなりデンデラの長のメイは村への復讐ののろしをあげます。
それは老婆たちを捨てた村へ寝込みに奇襲をかけて皆殺しにするという恐ろしい復讐。
しかし、デンデラには新たな敵、腹をすかせ冬眠が出来ない母子羆が襲ってきて老婆たちを食い殺し、デンデラを破壊してゆきます。更に悲劇は押し寄せデンデラは壊滅状態。
最後まで残った、カユとヒカリがデンデラを出て羆と対決。
そして・・・最後にはビックリするような結末で話が終わります。

とあらすじをおおまか書いてみたんですが、映画を見ていないと全く想像つかないですよね。70越えの老婆たちが村を奇襲して皆殺し、人食い羆と戦うって津山30人殺しと三毛別羆事件がミックスしたようなものかと思っちゃうじゃないですか・・・。
しかもばあちゃんたちが戦うって一体??
笑っちゃいそうですが、老婆の皆さん本気です。
特に長のメイさんは戦闘モード爆発しています。怒りは怒髪天を衝く勢いで老婆たちは戦闘訓練も行っています。すごいよ婆ちゃん達・・・。羆との対峙ももちろんガチンコ対決で仲間をおとりにしておびき寄せたり、至近距離で戦ったりとすざましい戦闘力ですが、やはり年寄りなので力足らずではありますが気迫は十分で羆に確実にダメージも与えておりました。
勢いで最後まで見てしまった感がありますが、私はこの映画好きになってしまいましたよ。
まず、何と言っても老婆たちが可愛いのです。主人公のカユ役のルリ子さんはもう愛らしくそして勇敢で素敵過ぎ。そのほかの皆さんもメイ役の草笛光子、ヒカリ役の山本陽子、マサリ役の倍賞美津子、名女優さんたちがこれでもかと老婆役を演じていますが、いい味わいを出していてホント素敵なんですよ。
ここに出てくる以外の老婆の皆さんも可愛いしなんとも言えない愛嬌があって私は萌えてしまいました。
大虐殺映画ではあるのですが、老婆の皆がやたら元気なのがとても気持いいですねぇ。


ちなみにこの映画を撮った天願大介監督は今村昌平監督の御子息とか。今村監督といえば、1983年公開の深沢七郎原作の「楢山節考」を撮っておりましたねぇ。
30年を経て帰ってきた姥捨て山の老婆たちは強くなっておりました。

デンデラ」には原作があると知りこちらも読んでみました。

デンデラ

デンデラ

途中のエピソードや結末は違っていた部分もありましたが、原作ではデンデラの老婆たちの一人一人の描写が細かく描かれていてよかったです。そして、最大の敵、羆(赤背)からも描かれていて読み応えがありました。

70歳なんてまだまだ娘っ子。
ここ最近の高齢者社会を見るとホントそうかもしれませんねー。
皆元気だもんなぁ。
うちの母ちゃん(74歳)もデンデラに所属したらさぞかし良い戦闘力になると思いますw