東京都美術館「バルテュス展」

東博を出ると更に雨が激しくなってきていました。
雨の上野公園です。

次に向かったのは東京都美術館です。

こちらもとても楽しみにしていた展覧会「バルテュス展」です。

私がバルテュスを知ったのは澁澤龍彦の「幻想の彼方へ」の中で紹介されていたのがきっかけでした。いつか見てみたいものだと思っていた画家のひとりだったので今回のこの展覧会は20年越しの夢がかなったような気持です。

会場で音声ガイドを借りるとうれしいサプライズがありました。なんと、バルテュスの奥様である節子夫人が解説をなさっているのです。
更に会場内にアトリエの再現もあったのですがこれが本当に素晴らしかったです。
アトリエに長細い窓が一つあり光をそこから取り入れていたそうです。
そんな自然の光の中から生み出される作品の数々は素晴らしいものばかりなんですね

調度、正午少し過ぎの時間帯だったためか来場者もそんなに多くなくて絵をじっくり見ることができました。ちょっと暗めの照明もとてもリラックスできてじっくり絵を鑑賞することが出来ます。静寂の空間はバルテュスの絵の中の世界にすっかり入り込んでしまった様な感じです。
エロティシズムと静という対極の世界が見事に融合しているのがバルテュスの世界だと思います。
パンフレットの表紙にもなっている「夢見るテレーズ」や
図録の表紙になっている「美しい日々」
 
 
どちらもそんな不思議な世界が広がっています。
人物画も素晴らしいのですが、風景画もとても素晴らしいものが多くておどろきました。セザンヌのような感じの風味ながらもやはりバルテュスの世界なんですね。

バルテュスの作り出す色もまた魅力のひとつです。
ちょっと渋いような暗い色合いが独特の幻想的で無機質な雰囲気をもっているんです。

今回とっても見たかった1枚がありました。
「地中海の猫」という作品です。

バルテュス唯一の海の風景の作品だとか。パリのオデオン広場のシーフードレストランのために制作されたものだそうです。
127×185センチの大きなカンバスに描かれています。
猫が擬人化されていて海から伸びた虹が魚になってお皿に飛び込んでくるという実に楽しい作品です。

バルテュスの作品には猫がたくさん出てきます。
しかもみんな個性派でいい風味の猫の人ばかり。
 
 
 
 
まさににゃんこ祭りです。

バルテュスが子供の頃に飼っていた猫のミツがルーツのようですが、11歳のときにすでにこの愛猫ミツの版画作品を制作していたとはすご過ぎですね。

日本を愛したバルテュスらしい作品です。
こちらは歌舞伎の見栄のポーズを参考にしているそうです。


そして、まさにジャポニズムというべき作品が今回初公開されていました。
「朱色の机と日本の女」です。

モデルは節子夫人だとか。
平面な画面はまさに日本の浮世絵の世界です。
今回は絵画のほかにもバルテュスの愛用品の展示もあり、バルテュスは着物を着て過ごすこともあったそうで愛用の着物が展示されていました。日本の古典文学の源氏物語や今昔物語なども愛読していたとか。
そんな日本びいきのところが作品の中のエッセンスにちりばめられているので私たち日本人にも親しみを感じさせてくれるのでしょう。
素晴らしいひと時を過ごすことができました。