本当に怖いのは人?

賃貸の物件でクレームが一番多いのは騒音です。上の部屋の住人の足音がうるさい、逆に下の住人の騒ぎ声が聞こえて夜も寝ていらんないなどなど日常茶飯事です。生活音というのは集合住宅で暮らしている以上なくなることはないので、自分だってだしているはずだからそのあたりは当事者の歩み寄りになるのですが、やはり時たま過度に生活音を出す人、過度に生活音に敏感なひとっていうのはいます。

うちの弟の出くわしたちょっと過度な生活音に反応した人の話です。

弟に彼女が出来ました。彼女はしばらくしてから実家暮らしだったのですが、一人暮らしを始めました。古めの鉄骨作りの二階建てのアパートの二階の部屋。見た目はしょぼいけれども、家賃が安いのと駅から近くて会社の通勤が楽だというのが決めてになったそうです。

契約を終え、引越しを済ませ、今時には珍しい律儀なお嬢さんだったのでまわりの部屋にタオルを持ってご挨拶に行きました。ほとんどの部屋の人には挨拶が出来たのですが一件だけ、彼女の真下の部屋だけはいつもいるようだけれども出てきてくれない。それで彼女はまたまた律儀にポストに手紙を添えてタオルを入れておいたそうです。

引越しを済ませてしばらくしたある日に弟が彼女に呼ばれました。部屋に行ってみるとまずシィーっと静かにするように言われたそうです。下の階の人が生活音に敏感な人だそうで、彼女が部屋にいると下から怒鳴り声が聞こえてくるとのこと・・・始めはどこから聞こえてくるのかわからなかったのですが、耳をすますと自分の座っている床の下から。
怒鳴り声は明らかに彼女に向って発せられていたのものだったのです。

「ちょっと困ったことになったんだけれどー」と弟からの電話で相談を受けました。

怒鳴り声の件で家主さんに相談をした時に下の入居者はどんな人が聞いたら60代くらいの独身の男性で仕事をしていないそうで部屋にいる時間がとても多いとのことがわかりました。
男性に大家さんから怒鳴り声のことを言ってもらったところ。男性としては彼女の階段を上り下りするときのヒールの音がうるさい、ドアの開け閉めがうるさい、何人かが上の部屋に来て騒ぐ、あげくは男を連れこんで騒いでいてうるさいので迷惑をしているのはこっちだとの言われたそうです。

話を更に詳しく聞いていってみると、このアパートは高齢の独身者が大半をしめていたというのがわかってきました。みんな静かに静かに生活をしていたんです。
それがある日、若い生命力に溢れた女の子が引越したことによって外部からいろんな人が訪れる活気のある空間が出来て、日常の静寂が破られてしまったのです。

向こうからしてみればたまったものではありません。その怒りが怒鳴り声となったというわけです。下の部屋の人の怒りは沸騰寸前で彼女に向けられており、現時点で一触即発状態であり、糸が切れたときに実力行使に出ると予想され考えている暇はないと私は判断しました。

「出ろ、引越ししろ。彼女は今日からお前の部屋に泊めてやれ」とアドバイスして彼女にも伝えてもらってその日から彼女は弟のマンションに泊まり、大家さんに退去願いを出し数日後に弟と友人で逃げるように引越しを済ませました。

引越し終わったとの報告を受けてホッとしていると弟がポツリと一言

「ねえちゃん、引越し終わって彼女の部屋のポストみたらにタオルが入っていたんだよー。引越しの挨拶用に下の人に配ったやつだった。引越ししている間に入れたみたいだよ。引越しさせて正解だったわ」

これを聞いてほんのり怖くなりました。そして、彼女の引越しをした次の人もまた同じような目にあわなければいいなと思いました。
生活の時間帯、年代、家族構成などが違った場合にはこういうトラブルというのは多いものです。

この彼女が今やつのお嫁さんでして弟がこのときに機敏に動いたことを頼もしく思えたそうなのですがね。今二人の住んでいるマンションが一階の部屋というのはこんときの出来事が影響しているかも?とふと思いました。

私の住んでいる集合住宅の下の人は私より少し若いご夫婦です。始めにご挨拶に行ったときに共働きと伺いました。生活時間帯が似ているようなんで音に関して特に問題もなく静かに暮らしています。運が良かったなと思います。