うわさと俗信 

学校の怪談といわれると思い出すのが、「赤い紙、青い紙」「理科室の動く標本」などなど全国的に流布していている怖い話です。何年か前に映画までになり、怪談ブームがあったときには懐しい話しやら更に進化していた怪談を聞いてブームは何回もあるんだなと感じたものです。そんな色あせない昔からある全国的に広がる噂話と俗信を集めた本です。

うわさと俗信 民俗学の手帖から

うわさと俗信 民俗学の手帖から

噂の項では、前述の学校の怪談口裂け女人面犬、首なしライダーなどいずれもどこかで聞いたことのある噂です。噂なんで「友達の友達の」とか「知り合いのだれだれさんの家族が」とか実際に自分に関連ありそうでない人からの伝聞からくることが多いようです。実態がないのだけれどもバリーエーションをつけて口述で人から人に伝わってゆくのです。

80年代に流布された「日本ダルマ」という恐ろしい話は忘れられません。日本ダルマを見た人は実際にいるのでしょうか?もの凄いリアリティを持ちながらも今もどこかで語られているはずです。バリエーションもかなり多いと思われます。海外旅行に行く前には試着室に気をつけなと言われました。
最近では、ディズニーランドで誘拐される話っていうのも一時、かなりのバリエーションで聞いた記憶があります。

携帯メールなどのチェーンメールなども噂の加速を現代はすすめていると思うのですが、日本以外にもこういった、噂の伝聞というのはたくさんあるようです。

消えるヒッチハイカー―都市の想像力のアメリカ

消えるヒッチハイカー―都市の想像力のアメリカ

チョーキング・ドーベルマン―アメリカの「新しい」都市伝説

チョーキング・ドーベルマン―アメリカの「新しい」都市伝説

赤ちゃん列車が行く

赤ちゃん列車が行く

ヨーロッパの現代伝説 悪魔のほくろ (白水Uブックス)

ヨーロッパの現代伝説 悪魔のほくろ (白水Uブックス)

アメリカ、ヨーロッパの噂の話を集めた名著なのですが、今もたまに話される某ファーストフードチェーン店のハンバーガーの肉はミミズというのはアメリカから発祥した噂というのを知ることができます。そのほか、日本オリジナルと思っていたのがアメリカやヨーロッパの亜流と知って楽しい考察をすることが出来ます。
この本で私は「都市伝説」という言葉をはじめて知りました。

ピアスの白い糸―日本の現代伝説

ピアスの白い糸―日本の現代伝説

これはやはり80年代にピアスブームの頃のまことしやかに流布された噂話。ピアスを開けた穴から白い糸みたいのが見えてひっぱったら失明してしまった。糸と思っていたのは視神経で・・・という話でみな、ピアスを開けるときにおびえていたものです。実際にはそんなことなくて素人が安全ピンなどで開けてばい菌が入り化膿するほうがよほど恐ろしいですが。

尊敬してやまない松谷みよ子さんの集めた現代民話の集大成です。

俗信については、このあたりはどこかで聞いたことがあると思います。
霊柩車が通ったら親指を隠す
妊婦は箒をまたいではいけない
夜口笛を吹くな
くしゃみをしたらその後に言葉をつけないといけない

など昔からの言い伝えで、実際に効果があるかはわからないものです。
でも霊柩車が通るとつい、親指を隠してしまうしぐさを大半の人がしてしまうのはその浸透性を物語っているのではないかと思います。
全国的に広がる俗信とその地方独特のものがあるのでこちらもバリエーションはたくさんあると思います。
禁忌についての記載も非常に興味深いです。庭木に植えてはいけない木や植物がどうして植えてはいけないのか(形状や場所で忌み嫌うものを連想からが多いようです)などの考察があって禁忌の理由をしることが出来ます。

くしゃみをしたときに後に言う言葉はののしる言葉なんですが、。「ハックション 糞くらえ」「ハックション チクショウ」のほかに「インニャクラエ」「タッショダヨ」「モウヒトツ」などなどたくさんの続く言葉があるのには驚きました。
この本には沖縄の民話で子供をとりにくる、女幽霊から守るのにくしゃみした子供に「糞食らえ」と言葉を続けてやり助かったという話が記載されていました。
くしゃみをすると魂が飛び出しそうとうところから生まれた俗信なのかもしれません。

ちなみにこのくしゃみの話もイギリスケルトの妖精神話で赤子にくしゃみをさせてさらっていこうとした妖精から身を守るために「神のご加護を!」といわなければいけないという俗信があるというのを読んだ記憶があります。

俗信もまた改めて調べてみると地方色がありとても面白いものです。