復活の日

今年の冬はノロウィルスに呪われた人がたくさんでました。ここ数年、インフルエンザなどの猛威が激しくなっているような気がします。人間の免疫が落ちているのか、はたまたウィルスたちが更なる進化を遂げているのか?
1月に自分がノロウィルスに呪われてエライことになったときにふと思い出した映画です。

復活の日 [DVD]

復活の日 [DVD]

細菌兵器に使うため弱毒化する過程で出来た、猛毒の新型ウイルス MM-88(イタリア風邪)事故による蔓延で、人類(哺乳類、鳥類)はほとんど絶滅。生き残ったのは南極大陸に滞在していた各国の観測隊員だけであった。
絶望の中から再建の道を模索する彼らだったが、地質学者・吉住がアラスカへの巨大地震の襲来を予測する。そしてこの地震を核爆発と誤探知する米の自動報復装置 (ARS) によってソ連本土に核ミサイルが撃ち込まれ、さらにこれを受けてソ連の ARS も作動し、南極も含めた全世界に核弾頭付き ICBM が降り注ぐ危険が判明する。吉住は自ら志願して、ワシントンD.C.にあるスイッチを切る為にふたたび死の世界へと赴く……。

SF作家の大御所、小松左京が1964年に発表した小説を1980年代に角川が映画化したものです。前回紹介した「戦国自衛隊」と両方の並行撮影ということだったのですが、こちらの費用は当時で25億円。海外版も作られたまさに超大作だったのです。

と真面目なことを書いているのですが、当時、小学生か中学生だった私の記憶に残っているのはテレビのCMでぼろぼろの服着た老人メイクの草刈正雄だけだったという・・・(笑)
そんなふざけた記憶の私に一昨年、何故か突然、角川祭りがやってきて(@みうらじゅん氏曰くマイブームですね)角川映画のDVDも大分出てきたので観てみようと思いレンタルしまくりで観た作品群の中のひとつです。

この映画は滅び行く人類をテーマにしているので全体的にものがなしい雰囲気が漂うのですが、そんな雰囲気に合い間って映像が美しいのですね。南極の流氷などの景色や潜水艦(これはチリ海軍のものだそうです)、草刈正雄演ずる吉住が南極から船に乗り生き残った仲間たちが待つ南に向かうときに通過する南米の町のミイラのいる教会や天空のマチュピチュ遺跡や壮大な夕陽。これでもかというくらいの美しい映像がストーリーにアクセントを加えます。
本編を見た後で深作監督と当時の深作組のメンバーの解説付でもう一度見ていたら撮影担当の木村大作さんが撮影秘話をこれでもかと話してくれるのがおまけとしては最高に面白かったのですが、とても苦労した撮影であったのが伺えました。ここまで言っていいのかなというくらい木村大作さん飛ばしまくりの解説です。深作監督が押されてます(笑)
ペンタゴンにヘリコプターをギリギリまで入れてしまってそのペナルティで操縦士がライセンスを剥奪されてしまったので補償をしたとか、あの夕陽を撮影するのにかなりの日数を費やして夕陽待ちをしたとか、、笑える話としては、感動的なラストシーンの湖は日本の本栖湖だったとか(笑)
当時はソ連アメリカのにらみ合いの冷戦があったからこそ出来た映画でもあったという言葉が印象的でした。日常の毎日の中でももしかしたら?という不安があった時代でした。
この映画が公開されていた時代の70年代から2000年になり更に深まる不穏な世界情勢、日本ではいつ大地震が起こるかもしれないという恐怖がある現在、誰もが漠然ともっている見えざる不安は更に大きくなっているのかもしれません。現在はひとつの恐怖ではなくて複合的な恐怖ともいうのでしょうか?

花を添える女優さんではロミオとジュリエットで一躍スターとなった、オリビア・ハッセーが記憶に残っているのですが、他には吉住と別れて日本で看護婦をしていた浅見則子役の多岐川由美が恐ろしいくらいに美しいのです。上村一夫が描くようなクールビューティですね。子供の頃はあまり興味がない女優さんだったので印象が薄かったのですが、正統派な美人でびっくりしました。

「Life is wonderful.」
この言葉はワシントンDCに核爆弾のスイッチを吉住と共に向かったカーター少佐の最期の言葉です。希望を最後まで捨てないということ、「人生とは良いものだ」深く重みのある言葉です。

テーマ曲のジャニス・イアンの「ユー・アー・ラブ」は彼女の透通るような歌声ともの悲しいメロディがオープニングの南極の映像と合い間って華を添えています。