自虐の詩

自虐の詩 (上) (竹書房文庫ギャグ・ザ・ベスト)

自虐の詩 (上) (竹書房文庫ギャグ・ザ・ベスト)

自虐の詩 (下) (竹書房文庫ギャグ・ザ・ベスト)

自虐の詩 (下) (竹書房文庫ギャグ・ザ・ベスト)

今から10年以上前、20代半ばに東京のとある京王線沿線の駅に住んでおりました。一応、世田谷区だったのですがローカルな場所で駅も快速の止まらない各駅のみだったせいか私鉄沿線にありがちなギュッとこれでもかと詰め込んだ駅周辺の商店街がなんともいえないカオス感をかもし出していました。後に世田谷四人一家殺人事件の犯人がこの駅を利用したと報道されて駅の映像を見て変わっていないなーと思ったものです。

そんな雑多な駅前商店街にクリーニング取次店があったのですが、その一角が今どき珍しい「貸本コーナー」となっていました。クリーニングを持ち込んで知ったのですが、店主のいかにもやる気なさそうな雰囲気と本のラインナップに魅了されて、貸本コーナーに行くほうがメインとなっていきました。金額は確か漫画の単行本で1週間で80円くらいだったと思います。古くてかなり痛んだ本もあったのですがそれはそれで味のあるものでした。
漫画喫茶に行けばいいとも言われそうですが、仕事帰りにちょっ借りて家でのんびりと漫画を読みたかったのでこのシステムはありがたかったです。

ここの漫画がなんともレトロなシリーズが多くて、昔のホラーマンガやB級誌の漫画なども含めて往年の70年、80年の少年漫画があって私の趣味と符合。そしてそのほかに誰の趣味がわかりませんが、石森章太郎先生の描く沼正三の忌憚小説「家畜人ヤプー」のコミックなどもあり飽きることはありませんでした。

そんな中で見つけたのが、四コマ漫画のコーナーにあった業田良家の「自虐の詩」でした。四コマだからなにかオチがあるのかなと期待したのだけれどオチなしでひたすら主人公の幸江さんがわがまま亭主のイサオにいじめられるという不条理というよりも理不尽?いやこれは究極のSMなのか?と思わせる内容のオンパレード。しかもなんとなく幸江さんが喜んでいるんじゃないのか?と思う場合もあってDVだわ、共依存だわと凄い話が続きます。
しかし、後半になり幸江さんの過去の辛かった体験などが描き出され更に幸江さんが妊娠をして母となったとわかったときから加速するスピードで感動のラストに向かっていくのです。
今生きている人、これから生きる人全てどんな人も生まれてきて良かったねというメッセージが込められているような気がしました。
そんなわけでとても印象に残っていたのですが、この漫画何年か前に泣ける漫画ということで話題になって文庫化されたとか。

20代の頃とまた30代になって読んだときにどんな感想があるのか今、とても読んでみたい一冊です。

さっき、知ったのですが、今年の秋に映画化されるそうで・・・
幸江さん役は「嫌われ松子」の中谷美紀さん、イサオ阿部寛さんだとか
あーびっくりした。