おまけより割引してほしい

最近、新書が熱いです。「さおだけ屋は何故潰れないのか」、「頭のいい人悪い人の話し方」、「バカの壁」などベストセラーを出しています。そんな中で出てきた一冊です。

消費者はどんな時に「値ごろ感」を覚えるのか。豊富な事例を紹介しながら、経済心理学的に分析する。 値ごろ感、つまり費用対価値は分母に費用、分子に価値を置いた分数式で表すことができる。値ごろ感を上げるには、分母(費用)を小さくするか、分子(価値)を引き上げればいい。割引して費用を小さくした場合と、同じ金額でおまけをつけて価値を向上した場合を比べると、割引した方がより大きな効果を生み出す。おまけをつける財源があるなら、誰もが持つ「損失回避」の意識に合致する割引に使った方が有効と指摘する。

おまけより割引してほしい―値ごろ感の経済心理学 (ちくま新書)

おまけより割引してほしい―値ごろ感の経済心理学 (ちくま新書)

お得な買い物をすると嬉しくなります。お得な気持ちすなわち「値ごろ感」についての本です。タイトルにあるとおりおまけをもらうよりも買った価格を割引してもらったほうが得したなという実感は大きいものです。
値ごろ感といえば「やすい、はやい、うまい」でお馴染みの吉野屋の牛丼。確かに値段、時間、味という3つの要素の欲求に見事に答えてますからこれは得したと感じる部分が多いのでしょう。吉野屋の値下げの話題について300円から270円までの値下げをして300円からお釣りがもらえる290円で値ごろ感が生まれ、280円では20円のおつりがもらえるということで更なる値ごろ感で売り上げが増えたのに対して270円ではさしたる売り上げの効果がなかったというのも人の心理をよく考察した価格だっただなとうなづけます。
この本の中に出てくる例として大学生の日常があるのですが、仕送りの他にアルバイト代で生活をまかなっているのでやりくり上手で関心してしまいました。毎日の食事、遊び、携帯電話など元を取れる値ごろ感のあるものを徹底的に使いこなしているのですね。
逆にお金があって時間がない人たちは時間を買うということで、対価を支払いサービスや商品を買っているのだそうです。例えばデパ地下では出来上がったお惣菜を買うことが出来て家事の短縮になります。最近はとうとう「駅ナカ」になり駅の改札を出なくても買い物が出来てしまいます。究極的には時間を買うというとネット通販や宅配デリバリーなどもありますから、自宅にいるだけでも情報も必要なサービスもモノも手にはいる時代ですから時間を買う人たちもまたこういう中で値ごろ感を感じているのでしょう。
何でも手にとってものが買えることは選べるいう楽しみなのでしょうが、決められた予算や時間をうまく使って値ごろ感をしている学生さんたちのほうが考える生み出す楽しみなので頭を使って生産的で楽しそうだと思いました。
値ごろ感というのは自分の買い物の経験の中で養われるそうなので人によってそれぞれだそうです。実践で学んで日ごろから値ごろ感を探すと毎日が面白いものになるような気がします。この本には売る側のあれやこれやの戦術テクニックが書かれています。こういうシチュエーションで買ってしまう心理はこうなんだというのもわかってこれから買い物をするときには売場をチェックしてしまいそうです。
ちなみに、日本人は98円、2980円などの8で終わる数字に値ごろ感を感じますが、アメリカのスーパーなどでは19.99ドルと9の数字が多かった記憶があります。お国によっての価格に使う数字の値ごろ感についても。興味をもってしまいました。