壬生義士伝

盛岡の石割桜という不思議な桜を知ったのはこの映画をみたことがきっかけでした。
12月から1月頃になるとふと見てみたくなる作品です。

壬生義士伝 [DVD]

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浅田次郎さんの小説を映画化したものです。あらすじはこんな感じ。

江戸時代が終わり、明治の御代となってのちの話である。感冒に罹患したと思われる孫を連れて、老人が町医者に駆け込んでくる。町医者は新天地である満州に医院を移すため、引っ越しの最中であった。医者の夫人が孫を診察し、老人は待合室で一息つく。ふと老人の目に、古びた一枚の写真が映った。その写真に写った武士は、老人のよく知る人物であった。老人は町医者に問わず語り、昔を思い出して行く。老人が昔「斉藤一」と呼ばれていた頃に出会った壬生狼、「吉村貫一郎」という男の生き様だった…
京都で活気盛んだった新選組の、入隊してきたばかりの吉村貫一郎と出会った頃から語り始める。

吉村貫一郎いう人はご存知、幕末のあだ花である新選組の隊員なのですが、どちらといえば局長含めての有名どころ隊員に人気を押されて吉村という人は今までマイナーな存在でスポットを当てられていませんでした。吉村は新選組に入隊して剣の達人として名を馳せるが、鳥羽伏見の戦いの敗戦ののち江戸に引き返す幕軍の船に乗り遅れてしまい、脱藩した南部藩の大阪蔵屋敷に旧友の大野次郎右衛門を瀕死の状態で頼る。しかし、大野は切腹を命じる。吉村は南部藩に残した家族のために渡す品として刀を使わずに苦しみ抜いて死んでいくのです。壁に血文字で家族に渡してくれと書き残して・・・。

サムライとしたらホントにかっこ悪い。天下の無頼漢の新選組にいてもお金のためだけに一生懸命に働く吉村はホントにかっこ悪い。しかし、その働くお金はすべて南部藩にいる家族に送るために稼いだものだったのです。そのひたむきな家族への愛がこの映画の真骨頂なのだろうなと思うのですね。なりふり構わないその姿に誰を重ね合わせるのでしょう。終わるころにだーだーに泣けてしまうのです。人生キレイに生きることだけがかっこいいわけではない、はいつくばっても家族のためにだけに生きる生きかたもあってもいいじゃないかと感じます。
世のお父さん達もそうやって毎日生きているのですよね。
そう重ねるのは現代に通じる父の姿なのでありました。

中井貴一の演じる田舎者武士の吉村貫一郎の演技は素晴らしいものでした。
「おもさげねぇでやんす」といつもぺこぺこして腰が低くて人情に厚い。時には職務のためには首切りもいとわないという役どころの二面性が映えています。
そして、対極する無頼漢の斉藤一佐藤浩一も好演。NHKドラマでは芹沢鴨を演じていただけあって豪快さのあるアウトロー斉藤一です。
それと忘れちゃいけない、沖田総司役の堺雅人さんもひょうひょうとした総司を演じていて素敵です。最近見た沖田総司では一番のハマり役だと思いました。
新選組の隊士だと斉藤一が私は大ファンなので、吉村貫一郎とともにスポットを当ててもらえたのが嬉しかったです。

最近、ちょっと泣いたことがないという人におススメです。
盛岡の石割桜は吉村が南部藩時代に子供たちに勉学を教えていたときに語る言葉です。

「岩手の桜は岩を割って咲く・・・」

石割桜は現在350年の樹齢となって盛岡市盛岡地方裁判所敷地内にて毎年桜を咲かせているそうです。