岡本太郎が撮った日本

秋のカラッとした青い空と神社というのは実に絵になるなとこの季節になると私は思います。
清清しい秋の涼しい空気、実りの豊穣の季節の秋の景色と神社と注連縄のピンと張り詰めた雰囲気はどこまでも高い空に吸い込まれてゆきそうな神々しさを感じるのです。

岡本太郎さんは画家としてのイメージがとても強かったのですが、写真もたくさん撮られています。

岡本太郎が撮った「日本」

岡本太郎が撮った「日本」

岡本太郎が1950年代の日本の風景を切り取って写しだしています。

縄文土器、秋田、長崎、京都、出雲、岩手、大阪、四国、沖縄、青森、出羽、広島、紀州岡本太郎が撮影して紹介しています。
この時代ですから当然白黒写真なんですが、見るものを圧倒する迫力で写真がまるで3Dの立体のように見るものに迫ってきます。
まさに接写、迫力で
「ディテールがとんでもいいから、ギリギリッと」という姿勢のもとに被写体を映し出してゆきます。

縄文土器の写真などは文様をこれでもかと接写していてギリギリッとした緊張感がこちらにも伝わってきます。
図鑑などにあるかしこまった土器の標本というべき写真ではなくて、そこに縄文人の生きていた魂、こめられた呪詛までも映し出してしまうような陰影を表現してしまっているのです。

シャーマニズムにも興味を示したそうで恐山のイタコや沖縄のノロ、地方の祭りの風景など神の存在を探して全国を走り回ったのかもしれません。岡本太郎時代の作品も神がかりな部分があったような気がします。

この写真集の中で一番といえば、やはり「出雲大社」の写真でしょう。
神社の神殿も土器のようにかしこまって写すのが当然と思っていて、構えなく見ると神魂神社本殿の階段の大アップ写真にびっくりします。この位置で撮るのならば岡本太郎は地面に寝転がった撮影をしたはず。ここでもギリギリという迫力が伝わってきます。神殿の独特の階段に神が舞い降りたかのような一枚です。
出雲大社本殿も高い床を表すために斜めにファインダーに収めての撮影を試みています。創建時は48mの高さにあったと言われる出雲大社の当時の姿をも映し出そうとしているのか?
屋根の上の千木、鰹木が空高く伸びている写真も素晴らしいのです。

岡本太郎のギリギリッという緊張感を体感できるそんな一冊です。