狂いの構造

後味の悪さナンバー1の「東京伝説」シリーズを手がける平山夢明氏と精神科医春日武彦氏の対談集です。

「狂い」の構造 (扶桑社新書)

「狂い」の構造 (扶桑社新書)

タイトル通り、人の心の中の狂気という部分についての対談です。
最近、いろんな事件のニュースを見ていると思うことがあります。
「この犯人の思考回路は壊れているんじゃないのか?」と。
街中や電車などの公共の場などで出会う人でもそんな人に出会ってしまってドキリとしたり恐怖を感じることも増えてきました。
そんな社会に日常に急増中の「狂気」を持った人たちにスポットを当てています。

専門書のような小難しいことは一切なしに古今東西のお騒がせ事件や殺人事件、日本のみならずアメリカなどの事件の犯人なども含めて(シリアルキラーに関しては平山氏は「異常快楽殺人」という本を上梓しているくらいで詳しいです)狂っている事件や人物をセレクトして春日氏は精神科医の立場から言いたい放題、平山氏は実践での体験と己の体験からの見解。素晴らしい表現力と歯止め無しの言及というのが実にわかりやすくて不謹慎ですが面白かったです。

第一章のタイトルが「「面倒くさい」が「狂い」のはじまり」というものなのですが、実に言いえて妙です。本文では最近の赤ちゃんポスト、子供をバイクのヘルメットケースに入れて死なせてしまった若い夫婦などを例にあげています。こういう事件は深い意味も無く単純に面倒くさいということから始まっているのではないかと推測しています。

「バルンガ病」 
平山氏命名の現代人の心の病
プライドだけが不健康にでかくなった人間のことだそうです。
例 雪印の元社長の有名な名言「私だって寝ていないんだ」
被害者差し置いて自分が優先。私も被害者なんだという主張はまさにバルンガ病。

面倒くささが進行するとプルトニウムをバケツリレーした東海村の臨界事故にもなるというのは連日の食品業界の偽装問題報道と重ねてなるほどなぁと思いました。
こんな話がずーっと最後まで続きます。的確な見解と笑いがあってとにかく面白いです。
引用された事件の詳細も簡略化されて章ごとについているので読めてこちらも良かったです。日本の事件はここ十年くらいの事件が結構大きなものがあったなぁ事件の質が変わったなぁと思いました。とにかく短絡的で自己中心という印象です。

平山氏は以前、作品が全くかけなくなってまったスランプ時代があるのだそうです。
そのときに春日氏のもとに行ったことがあったそうなのですが、そのときに言われた一言  

 「部屋を掃除しろ」

薬もなーんにもくれなかったそうですが、言われたとおりにしぶしぶ掃除をしたそうです。
何年も掃除をしていなかったまさにゴミ屋敷のような部屋をこれでもかというくらいにピカピカにしたら、なんとその後6冊の本を立て続けに書けたという。そして今は一年ごとに著作の部数が増え続けているそうです。
やはり室内というのは心を表すのだろうなと思ったエピソードでした。
掃除と整理整頓というのは面倒くさいものです。この面倒くさいことをすることによって失われた心が取り戻せるのかもしれませんね。

雑な人間も増えているそうです。
例えば・・・・炊飯器や鍋からそのまま食べてしまう最近の若者。
ご飯をよそう、おわんによそうこの面倒くささを捨ててしまうと雑になってしまい、人間関係、社会生活でも雑になるから事件やトラブルが多くなるのではないかと言ってます。

人間らしさっていうのが面倒くささでもあるのではないでしょうか。
面倒くさいと言わないように気をつけねば。
「面倒くさい」を連発すると危ないかもしれません。「疲れた」も次に危ないそうです。

言霊ってあるんだろうなぁとふと思いました。