消え行く大衆娯楽文化の記憶 大宮オークラ劇場

昨日、2月17日をもって大宮駅東口にある大宮オークラ劇場という映画館が43年という長き歴史に幕を下ろすことになりました。大宮オークラ劇場は一般映画館ではない成人映画の専門映画館、いわゆるピンク映画館です。埼玉では最後になるピンク映画館だったのだそうです。

大宮駅東口周辺ではビル建築ラッシュがここ数年起こっていて、古い雑居ビルのようなものが取り壊されてま新しい最先端のビルがぞくぞくと建ちあがっています。大宮オークラ劇場の向側もそんなビル建築真っ最中。

オークラ劇場のある場所は調度、大宮東口大栄橋のちょっと手前、大宮リクルートビルの裏手になるあたりでこの界隈の細い路地は小さな飲み屋さんとか飲食店、質屋さんなどなどがあって怪しさ満載。ひしめく小さな雑居ビルの雑多さが人間の生命の力強さを感じるような凄くいい感じの雰囲気なんです。建物も古くて煮しまった感じでたまりません。こんな場所がピンポイント的に売りに出されパズルのように無くなっています。

雑多なこの界隈がクリーンなファストフード店、デパート、コンビニ、チェーン居酒屋が並ぶ個性のない地方都市のひとつになってしまうのもそう遠くないのもかもしれません。
画一化されたされた都市というのはどうも味気ないものだと思うんですが。
人というのはキレイすぎると落ち着かないわけでして、雑多なものがあるからこそなんとなくホッとするんだと思います。

17日はオークラ劇場最後の日を見届けようと女性の友人と三人で連れ立って生まれて初めてピンク映画館に行ってきました。
入り口

素敵な女優さんのポスター ボカシ入れてあります。

1階が小劇場で2階が映画館です。古びた建物の階段を上がるとモギリさんのいる入り口に到着。なんとここで浜野佐知監督がお出迎えをしてくださってました。感激。入場料は女性客はこの日割引料金で1000円。券売機でチケットを買って中に入ります。

中に入るとなんだか不思議な空間、男性客はたくさんいるし、可愛い女装のレディもいらっしゃる。普段あまり観ない光景があります。そんな中で女性客が安心して鑑賞できるようにと劇場でも43年間で初の試みという粋なはからいで座席の一部をロープで囲い、仕切って女性専用席を設けていただきました。おかげで安心して映画を観る事ができました。
ロープの外を回るおじさんや男性客の方は見受けられましたが、休憩のときなどにロビーでお会いして話をしたりしましたが皆さんとても良い方ばかりでした。ちなみに女性専用席は満席になるくらいたくさんの方がお見えになってました。
一本目の作品をみて浜野監督と主演女優の北川明花さんの舞台挨拶とトークショー。監督の浜野佐知さんは女性の方です。

普段聞くことの出来ない映画製作の裏話をたくさん聞けました。ピンク映画の作品の予算は今も全盛期のころも変わらずに300万円、撮影日数は3日間。衣装も俳優さんたちの自前なんだそうです。資金不足の状況の中で製作をされているのだというを知りました。撮影などもとても工夫されて効率的にされているんですね。映画がホントに好きな方たちが低予算の中でも負けず支えている世界なんだというのを痛感しました。

少しの休憩があったので劇場の外に出てみると北川明花さんのサイン会があったので私もサインを貰ってきました。(サインはありがたく自宅に飾ってあります)凄く可愛いです。華奢でお人形さんみたいです。

この後に2本の作品を見て鑑賞会は終了となりました。

鑑賞会が終わった後で、映写室を見せていただけるというので潜入。映写技師さんのお話を聞きながら中を見ました。
中の様子

この大きな機会が映写機です。

これがフィルム。ピンク映画だと4巻で一本分の映画上映分になるのだそうです。

この袋に入ってフィルムが送られてくるそうです。

映写室から観客席を写してみました。

作品鑑賞中に気づいたことは設備のいたるところの古さでした。しかし、その古さがまた良かったりもしました。長年使われてきた機材にも働いてきた方たちにもお疲れ様と声をかけたくなりました。
43年の月日にピリオドを打つ大宮オークラ劇場は上映も終わり帰りに出口を出て振り返ると建物がちょっと寂しく濃いグレーに見えてしまいました。

個人的には大宮駅東口大衆文化遺産として「いづみや」「多万里屋食堂」「大宮オークラ劇場」の三大巨頭だっただけに今回の閉館は凄く凄く寂しい限りです。

映画が終わった後に三人でいづみやに行き、思う存分今日見た映画の感想を話しました。三人とも始めてのピンク映画鑑賞でしたが、三人の意見で一致したのは「凄く面白かった」ということです。ストーリーもSFチックなもの、叙情的なものなどひと捻りがあったりして面白いし飽きることがなく楽しめたんですね。性的描写以外の部分の作品の中のメッセージが凄く伝わってくるんですね。フィルム作品の良さなどなど3時間くらいずっとピンク映画談義に花が咲いてしまいました。また機会があったら観てみたいですね。

今回の映画鑑賞に行く前に山崎邦紀監督よりメッセージを頂いていました。
「17日が閉館日ですので、等身大のピンク映画館の消滅を見届けてください。」
消え行く大衆娯楽文化の最後を現場で立ち会え見どけることが出来たこと。閉館のニュースを教えてくださった遠藤哲夫さん、山崎監督に感謝いたします。