土曜ワイド劇場 「江戸川乱歩 美女シリーズ」

テレビ朝日の土曜ワイド劇場の数ある作品の中で一番好きなシリーズは天知茂明智小五郎を演じる「江戸川乱歩 美女シリーズ」です。
77年から85年まで天知茂が亡くなるまでシリーズ化されました。当時リアルタイムで観て、午後3時から放送される再放送で何度も見ても飽きなかった秀逸な作品ぞろいです。

昨年、熱海に行ったときに熱海の風景、ニューアカオ、錦ヶ浦というキーワードで70年代に思いをはせ、この美女シリーズの映像がふと思い出されました。
DVDは出ていると知ったのですが販売終了作品が多く、あきらめていた矢先、昨年末にツタヤでレンタルDVDを発見。全25話がリリースされておりました!!
まさに運命の再開。こうなったら見るしかありません。
そんなわけで、12月の終わりから1月のはじめまで地味に全25話を堪能して観ました。
晦日も元旦も明智先生祭りしてました。

明智小五郎役の天知茂のクールなダンディーさは今見ても惚れ惚れしてしまいますね。
あの眉間のしわといい、ダンディーなスーツ姿、狙ったような突っ込みしたくなる私服姿、変装のマスクをはぐ場面などなど天知茂だけを追いかけて見ても楽しいです。
浪越啓二役の荒井注、文代役の五十嵐めぐみも明智先生の脇を見事にサポートしていて良いです。
犯人役の役者たちもこれまた名優そろいです。
美女たちも懐かしい美しい女優さんばかりでこれも目の保養で楽しいです。

江戸川乱歩作品のエロ、グロ、キッチュな世界観を見事に映像化していて、なおかつ、テレビというメディアを観る大衆視聴者目線をひきつけて離さないような作品演出がすばらしいです。宮川一郎ジェームス三木などの脚本家陣と監督の井上梅次はホント大衆が何を望んでいるかを良くわかっていらっしゃる。つまりわかりやすさなんですよ。
それとセットの造型がいろいろ凝っていて面白いんですね。手作りの造型だからこそ面白いのです。CGならばきっともっと良いものが作れるでしょうが、やはりアナログの重量感にはかないません。洞窟の中とか怪しい工房や研究室、なぜか懐かしいと思ったら仮面ライダーとか戦闘ものの特撮セットに通じるチープなセットがやたら多いのです。そこがまた私にはツボでたまらんちんなのです。

全作品の中でどれが一番かというのを選ぶのは非常に難しいですが、
結局欲しくて欲しくて買ってしまったDVDは3本です。

江戸川乱歩「黒蜥蜴」より 悪魔のような美女 [DVD]

江戸川乱歩「黒蜥蜴」より 悪魔のような美女 [DVD]

黒蜥蜴役の小川まゆみのきりっとした美しさが最高にいいです。最後まで見事な黒蜥蜴で明智探偵との対決が実にかっこよかったです。
前半ロケはサンハトヤ(笑)
これ見て次回サンハトヤに泊まってみたくなりました。
井上梅次監督は京マチ子が黒蜥蜴を演じた1962年の映画、黒蜥蜴の監督でもあります。
そして、若き日の天知茂美輪明宏の舞台、黒蜥蜴で明智小五郎役を演じているんですよ。なんと豪華なラインナップでしょうか。オープニングから明智探偵事務所の新年挨拶にはじまりつかみはオッケー。
冒頭に出てくる、地下にできたパノラマ島の造型がどう見ても妙に手作り感あふれた地獄巡りを髣髴されてもう期待度100でそのまま話は進んでゆきます。
パノラマ島のエロスの園もよく見ると突っ込みどころ満載ですが、これはこれで味があってアナログ的な雰囲気が猥雑さや怪しさを逆にかもし出して、この世界観が乱歩の怪しい世界観を生み出しているんですねぇ。
美女役の叶和貴子の清楚な美しさがこれまたいいんです。
そして、絶対に見てほしいラストの人間花火。このエンディングを見るだけでこの作品見てよかったと思える凄い終わり方です。

(レンタル店で紛失していたので買いました)
これでもかというくらいグロなシーンやらマスクやら造型がいっぱい出てきて無暗に怖がらせてくれます。第1作ということもあり、シリーズ化を意識していないようにも見えます。名バイプレーヤーの浪越警部も出ておりません。とはいえ、非常に引き込まれる内容で後の美女シリーズのはじまりを予感させる作りになっております。

ちなみに私は全作品の内容をほぼ覚えていたので、一緒に見ていた相方が呆れてました(笑)それくらい好きな作品なんですよぉ。
ほとんどが江戸川乱歩の作品からは程遠い脚色になっていますが、原作との読み比べもできて、それはそれで楽しかったりします。

テーマソングはかっこよすぎです。
今聴いてもまったく色あせていないです。明智先生ダンディー過ぎっす。

これは最終作品の25作目「黒真珠の美女 心理試験」のエンディングです。
天知茂明智探偵、もっとたくさん見たかったです。
思いのほか早く亡くなってしまってホント残念ですねぇ。

最近のドラマにはないアクがあってまさに大衆娯楽作品。
おススメです!

天知茂の付き人をしていた若き日の宅麻伸がチョイ役でたくさん出てきますので、彼を探すのも楽しいですよ。ギリシア彫刻のような丹精なマスクにびっくりします。