異界からのサイン

こんな話を誰かから聞いたことはありませんか?
おじいちゃんが亡くなる前に夢枕に現れた。
とか
親戚の○○さんの夢を見たら翌日に亡くなったとの知らせを聞いた。
などムシの知らせというような、不思議な話は割りと身近なところでたくさん聞くことができます。実際にそんな体験を自分自身がしたという人も多いのではないでしょうか?

異界からのサイン

異界からのサイン

そんなちょっと不思議な体験談、いわば「あの世とこの世を結ぶ話」を松谷みよ子さんは「現代民話」と名づけました。こういう不思議な話は現代でも民話のように口述で人から人に伝えられています。この本はそんな不思議な体験をした人から収集した現代民話の本なのです。人から聞いた話、実際に体験した話など不思議だなと思うものやちょっと背筋が寒くなる話まで・・・実にさまざまな体験談が出てきます。

戦争時代の兵隊さんの話も多く出てきます。戦地で亡くなったひとが挨拶にきた話や、ひめゆりの塔の女子学生たちの話などは、戦争の恐ろしさを再び忘れないように語り継いでゆかなければいけないものなのだと思います。
話を語ってくれる方の年齢が高いのが他の怖い話などの本と違うところなのかもしれません。

祟って呪われたというような話はないのですが、読んでいて、そういえば似たような話を聞いたなーと思うような話がいくつかありました。

死んだ人が姿を変えて(蝶や虫)現世に戻ってくる話などは私も誰かから聞いた覚えがあるのです。親しい身内が亡くなったときには身内にだけわかる不思議体験というのがあるのかもしれません。根底にあるのは恐怖ではなくて逝ったものと現世のものに繋がる、優しさや愛情を感じるので読んだあとも懐かしい感じがするのでしょう。

人間以外にも猫、キツネ、メンドリなどにまつわる不思議な体験談も載っています。
笑ってしまったのは「猫の湯治」飼い猫が怪我をして温泉に湯治に行ったらしく後に温泉宿から料金の請求書がくるというもの。明治時代の話だそうです。

おどろおどろしいホラー本に食傷気味の方に是非おススメしたい一冊です。

現代の怪談の原点とも言える名著、「現代民話考」全12巻もおススメです。

現代民話考〈1〉河童・天狗・神かくし (ちくま文庫)

現代民話考〈1〉河童・天狗・神かくし (ちくま文庫)