小布施の町と高井鴻山と北斎

GWの連休前に一泊二日の長野旅行に行ってきました。今の長野は善行寺の御開帳で大賑わいの様相。ありがたいことに格安の新幹線チケットがあったのでそれを使って行ってきました。大宮から新幹線でおよそ一時間半、あっという間に長野駅に到着。

その後、ローカルな長野電鉄の電車に乗って小布施に向かいます。途中途中にリンゴの木が見えて花が咲いていました。信州の春といった風景です。千曲川を越えて小布施駅に到着。このローカル線の駅の雰囲気はたまりません。

早速散策と行きたいところですが、外は生憎の雨。レンタルサイクルもあるのですが今回は見所を回ってくれるシャトルバスに乗ります。一日券で300円。
バスはクラッシックカーの可愛いバスでした。
 

終点の岩松寺まで向かったのですが、このバス途中で運転手さんが小布施の見所をアナウンスしてくれたりして、観光客にはとてもありがたいです。
 

バスに乗ること20分ほどで岩松院につきました。
http://park19.wakwak.com/~gansho-in/
 

山を背にして大きな本堂を構えた古刹です。
1472年に開かれたお寺だそうで、福島正則の霊廟もある由緒正しいお寺です。
仁王門 仁王さんが可愛いです。
 
 


本堂の脇に素晴らしい庭園と池があるのですが、ここで歌人小林一茶は有名な「やせ蛙まけるな一茶これにあり」の句を詠んだそうです。
 

本堂に上がります。拝観料300円を払って堂内に入ります。小布施までやってきた理由はこの堂内にあります。葛飾北斎が最晩年に小布施を訪れたときに、描いた天井画「八方睨み鳳凰図」が鑑賞できるからなのです。薄暗い堂内に上がり、ご本尊様を拝み天井を見ると見事な21畳の大きさの鳳凰が見えます。色もとても鮮やかで、まるで生きていて今にも羽ばたきそうな感じです。まさに大画面の大迫力。

以前は寝転がってみていたらしいのですが、今は椅子に座って解説のテープを聞きながらじっくり鑑賞ができます。この鳳凰図、座る位置を移動しても鳳凰と目があって面白いです。晩年の北斎は80半ばを越えていましたがこんな大作を描くとはいやはや恐れ入りました。この湧き上がるエナジーは一体どこから来ていたのか?

鳳凰図を堪能した後は、またシャトルバスに乗って小布施の町に戻りました。
次に向かったのは北斎館です。
 http://www.book-navi.com/hokusai/hokusai.html
入場料500円を払って中に入ります。

こちらには北斎の浮世絵、肉筆画がたくさん展示しており、生憎の雨のおかげで人が少ないので貸切の見放題常態。富嶽三十六景シリーズや瀧、橋シリーズを見ることが出来、また肉筆画では美人画花鳥画などなど実に見事な作品が展示してありました。
どれもこれも素晴らしくて圧倒されてしまうのですが、中でも私が魅かれたのは日新除魔。最晩年の北斎が毎日欠かさず一日1枚獅子を描いたもの。天才的な画力を持ちながらも尚、晩年にまで描き続ける姿はまさに天才というよりも「「画狂」という商号がふさわしいです。お獅子たちが無駄に力が入ってなくてよい塩梅のバランスで見事なんですネェ。

そして、ここにも大迫力のものがありました。祭屋台に描いた、「龍、鳳凰」図と「男浪、女浪」の怒濤図。こちらも大迫力です。中心の絵以外にも周りに描いた花鳥図がこれまた見事。怒濤図は八方睨み鳳凰図とともに見たかった作品なので、目の当たりに出来て感激ものでした。波のしぶきが北斎らしい表現で波が生きているかのような錯覚にとらわれます。荒々しさを匠に表現してありますね。

さて、葛飾北斎はどうして80半ばを超えて杖をついてまでこの小布施に来たのでしょうか。
この地の高井鴻山を訪ねてきたからなんだそうです。高井鴻山は幕末を生きた豪農商で佐久間象山をはじめ、多くの思想家や文人墨客との交流があり北斎もその一人だったそうです。
北斎館の直ぐ近くに高井鴻山記念館があるので、こちらにも行ってきました。入館料300円で高井鴻山邸や鴻山の作品を見学することができます。
http://www.localinfo.nagano-idc.com/museum/kouzan/index.html

屋敷は幕末の志士たちが集ったなごりなのでしょうか。屋敷内にからくり風の抜け道があり面白い作りになっています。隣には北斎が絵を描いた庵があるのですが、これがこじんまりして6畳一間くらいの大きさがいい感じなんです。

北斎が原画を描き、鴻山が描いた有名な象と唐人図も見ることができました。鴻山も素晴らしい花鳥図などを描いているのですが、私が気にいったのは晩年に描いた妖怪画。

百鬼夜行図をベースにしているような妖怪なんですが、鴻山オリジナルの妖怪がたくさん描いてあって、山水画風などに描かれていて実に妖怪たちが生き生きしています。
おどろおどろしい妖怪ではなく万物の象徴のような形で妖怪は画かれていて全てを昇華しているような感覚にとらわれます。北斎も素晴らしい偉人ですが、鴻山のような支援者、理解者がいてこそ才能を生かせたのだろうと思います。

見学を終わって売店に行ったら、なんと妖怪繋がりで水木しげる先生のサインがありました。そしてなんとなんと妖怪画繋がりで河鍋暁斎も高井鴻山と交流があったそうで、95年には「河鍋暁斎と高井鴻山展」とうい企画展も行われていたそうです。これは見たかったです。
北斎も妖怪画をたくさん描いていますから妖怪関連でのつながりも見えて今回の探訪は更に楽しいものとなりました。