東京都美術館「生誕300周年記念 若冲展」

自治会役員任期も終了したので、長らく足を向けていなかった上野に久しぶりに行ってきました。桜の花見の季節も終わり、新緑の緑が映える上野公園には朝の8時半だというのにたくさんの人であふれていました。
人々のお目当ては東京都美術館で開催される伊藤若冲の「生誕300周年記念若冲展」です。私も母と二人で早めにこの展覧会を見にやってきたのですが、開場が9時半なのでちょっと上野公園でも散策してから・・・と思って8時半頃に行ってみたら既にうねる大蛇のごとく長蛇の列が既に出来上がっていました。1000人くらいいたんじゃないですかねぇ。
この人手だけで若冲の人気の凄まじさを感じることができたくらいです。待ち構える人の熱気がすごかったですねぇ。
この熱気に押されてか、開場前に急きょ入場がはじまったようで9時にはうねるように人が動き進み始めました。私たちは9時半に入場することができました。

中に入るとすぐに音声ガイドリストを借りました。これがあるとないとでは鑑賞の濃密度が全く違いますからねぇ。中谷美紀さんの優しいナレーションにいざなわれ色鮮やかな若冲のめくるめく世界に入り込みました。
展覧会の構成は「画遊人若冲(1)」、「釈迦三尊像動植綵絵」、「画遊人若冲(2)」「米国収集家が愛した若冲」という興味津々なラインナップで展示作品数も多く、今までこれだけのたくさんの若冲作品を見る機会はなかったのではないでしょうか。順路を進むたびに圧倒される若冲の作品の数々に魅了されまくりでした。
水墨画、色彩画さらに版画までもあり、どれもこれも素晴らしかったのですが、中でも印象に残った作品をいくつか。

旭日鳳凰図と孔雀鳳凰図は色鮮やかな鳳凰と白さの中に深みのある陰影が映える孔雀鳳凰の対比が素晴らしいです。まさに鳳凰、神々しさを表しているかのような世界が目の前にありました。

そして、釈迦三尊像動植綵絵、こちらは釈迦三尊像相国寺にあり、動植綵絵が三の丸美術館に所蔵されていることから同時に見られることはまさに至福のような世界です。若冲が奉納した相国寺では釈迦三尊像を中心に動植綵絵33幅を左右に並べていた当時の展示方法そのままで今回の展覧会では見ることができました。圧倒的な画力と至高の技法、そして贅沢に使われた色鮮やかな絵の具で描かれたこれらの作品群に当時の人は度肝を抜かれていたでしょうね。生き生きとした花や草の植物たちや鳥や昆虫達はまるで生きているかのようで極楽浄土の世界に迷い込んだと思ったかもしれませんね。

若冲の描く植物や鳥は詳細な描写力と表現力によって描かれていてピンとはりつめたような緊張感と静寂の世界を描く画家というイメージがありましたが、実はおかしみのあるユーモラスな作品もたくさんあることを今回改めて知る機会にもなりました。
実際に庭で若冲自らが飼育していたと言われる鶏の描写などは狂気と思えるほどの観察力と写実で描かれているのに対し、虎や象、鯨、犬などはなんともいえないユーモラスが表情と描写がとても可愛らしいのです。



そんな動物たちが一同に集まった集大成が今回どうしても見たかった作品ナンバーワンの鳥獣花木図屏風です。升目一つ一つに濃淡をつけて描いた江戸時代のドット絵のようなタイル絵のような不思議な世界の中に象をはじめ虎、うさぎ、サル、麒麟、獅子、鳥などがひしめきあっています。屏風の中には理想郷の世界が広がっていました。

若冲の絵はずっと見ていても飽きないのですよねぇ。
飽きない理由はやはり裏打ちされた類まれな天才的な画力によるものだと思うのですが、中でも水墨画で使われている筋目描きこれは本当に細密で見事でした。


そんな若冲の作品をこれでもかと堪能してお腹いっぱいに眼福を肥やして会場を出るとなんと外には朝並んだ時よりも更にたくさんの人が入場を今か今と待っておられました。なんと80分待ちの札が・・・・。若冲人気どこまで行くのでしょうか。